目次
- INTRO
- MODERN SLOVAK GLASS
- GLASS &ART
- STUDIO OF GLASS -ACADEMY OF FINE ARTS AND DESIGN IN BRATISLAVA-
- GLASS & DESIGN
- ACADEMY OF FINE ARTS AND DESIGN IN BRATISLAVA
- SLOVAK GLASS FACTORIES
- ALEKSANDRA STENCEL & PATRIK ILLO
- ALEKSANDRA STENCEL x GLASS DESIGN
- ALEKSANDRA STENCEL x GLASS ART
- PATRIK ILLO x GLASS DESIGN
- PATRIK ILLO x GLASS ART
- ILLOLA
- Q&A
INTRO
様々なアートのスペシャリストに、芸術を通して文化や歴史を教えてもらう企画、「芸術と社会」の6回目になります。
今回は二人のゲスト講師に、アートとデザインについて教えてもらいます。
前半は、「スロバキアの現代ガラスとアート&デザイン」について、ブラチスラバ国立芸術大学(ACADEMY OF FINE ARTS AND DESIGN IN BRATISLAVA)のガラスデザイン学科で教授をされているパトリック・イロ(PATRIK ILLO)さんに教えてもらおうと思います。
後半は、ポーランド出身のアレクサンドラ・ステンツェル(ALEKSANDRA STENCEL)さんに、各自の制作と、二人の共同ブランド「ILLOLA」の作品を紹介してもらいながら、アートとデザインについて語ってもらいます。
お二人は過去にスロバキアの大手ガラス食器スタジオ「RONA」でプロダクトデザイナーとして勤務しながらスタジオガラスのアート部門でも貢献してきました。このように、ヨーロッパでは、「ガラス/グラス」を扱う「作家/デザイナー/職人」は、「アート/デザイン/工芸」の境界線があまりありません。これは、近代の分業体制ができる以前の、「画家でもありデザイナー」や、「発明家であり職人」であった芸術家達が当たり前だった時代の名残かも知れません。今日はこのようなことについても、色々教えてもらおうと思います。それでは以下、内容を簡単にまとめたものになります。
MODERN SLOVAK GLASS
それでは、スロバキアの現代ガラスの大まかな流れと、その歴史を創ってきた重要な作家達を紹介していこうと思います。第二次対戦後はチェコとスロバキアは互いに独立し、その後1980年以降は再度チェコスロバキアになりました。スロバキアのガラスの発展はチェコのそのアートとデザインガラスと比例しています。今回は20世紀中期からのスロバキアの作家達をメインに、現代ガラスの発展を紹介していきます。
大まかに上の図のように展開してみます。アート側では特に重要な人物は、1965年に設立されたブラチスラバ国立芸術大学(ACADEMY OF FINE ARTS AND DESIGN IN BRATISLAVA)のガラスデザイン学科で初代教授となったチェコスロバキア人、ヴァーツラフ・ツィグラー(VÁCLAV CIGLER, 1929)です。
デザイン側、食卓を飾る様なガラスデザイン(ワイングラスやコップなど)での重要な人物は、1950年からLR CRYSTALというガラス工場のデザインスタジオで、スタジオの職人兼デザイナーを務めたカロル・ホロシュコ(KAROL HOLOŠKO, 1912-1978) です。
この二人が双方にとても重要な教育、影響を与えていきました。
GLASS &ART
それでは、「ガラスアート」の作家を見ていきましょう。
まずは、ブラチスラバ国立芸術大学出身ではありませんが、スロバキア人の ルボミール・ブレハ(ĽUBOMÍR BLECHA, 1933-2009)です。吹きガラス(Blown glass)の中にラインを入れるテクノロジーを発展させました。
彼は大学機関の教育者ではありませんでしたが、スロバキアのガラスの発展、テクノロジーの進化に大きく貢献した人物です。
ブラチスラバ国立芸術大学(ACADEMY OF FINE ARTS AND DESIGN IN BRATISLAVA)の建築ガラスデザイン学科の初代教授、チェコスロバキア人のヴァーツラフ・ツィグラー(VÁCLAV CIGLER, 1929)は、1965年から1981年に沢山の現在の重要なガラス作家を輩出した人物です。
彼は一早くオプティカル(テクニカル)ガラスをアートガラスに取り入れた作家で、彫刻作品以外にもガラスのアートジュエリー、建築空間でのガラスインスタレーションなども手がけました。
アスコルド・ジャチコ(ASKOLD ŽAČKO, 1946-1997)、彼もブラチスラバ芸術大学の教授であり、ツィグラースタイルのガラスもあれば、90代のモダンスタイルな作品を制作をしていました。
ユーライ・ガヴラ(JURAJ GAVULA 1942-)はガラスだけではない様々な素材を扱うプロ彫刻家です。
パトリックさん自身も大きく影響を受けているそうです。
シュテパン・パラ(ŠTEPÁN PAL, 1944-)と ゾラ・パロヴァー(ZORA PALOVÁ, 1947-)は夫婦でガラス作家活動をしています。ゾラさんは、イギリスで教鞭をとっていたこともあり、共にとても実験的な作品や野外ガラス作品制作もしています。
エヴァ・フィッシェロヴァー(EVA FIŠEROVÁ, 1947-)は重厚な鋳造ガラスで、石彫の抽象彫刻の様に作品にします。
マリアン・ムドゥロヒ(MARIÁN MUDROCH, 1945-2019)は、ツィグラー教授に多大な影響を受けています。ミニマリスティックでコンセプチャルな制作をします。
ラツォ・パガーチ(LACO PAGÁČ, 1949)は重要なコンセプチャルアーティストとデザイナーであり、高校の先生もしていました。アート活動の系統はハプニング、儀式的パフォーマンスアート、ランドアートなどを80年代に行っていました。アートグループ「P.O.P」(LACO PAGÁČ – VIKTOR ORAVEC – MILAN PAGÁČ)の中心メンバーでもあり、ツィグラー教室の学生でありましたが、ガラスを使用しない多種多様な表現をしていました。
テクノロジーを多用した作家、パヴォル・フルシュカ(PAVOL HLOŠKA, 1953-) は完璧に磨き上げた異色のガラスを溶着したり、写真右の2mもの大型のガラス作品も制作します。
ミロシュ・バルガヴィー(MILOŠ BALGAVÝ, 1955-)もオプティカルガラスを使い、ジオメトリックやシンメトリーな静かで強い作品をつくります。
ユーライ・ステインフベル(JURAJ STEINHUBEL, 1958-)はガラスデザイナーとして複数のガラス会社とコラボレーションをしながら、写真の様な自身のアーティスティックな作品も制作しています。
フランス在住のスロバキア人作家、 ヴラジミール・ズビーニョフスキー(VLADIMÍR ZBYŇOVSKÝ, 1964-)は、ガラスと石を組み合わせたスペキュタル作品を展開します。
パロ・マホ(PALO MACHO, 1965)は、パトリック・イロの大学の同僚です。ガラスにペイントがされていて、形状や色、板硝子の構造を様々に変化させたインスタレーションをおこなっています。
オリバー・レッショ(OLIVER LEŠŠO, 1972-)は、パトリック・イロの大学時代のクラスメートで、今までにはないテクノロジーや技術に卓越した作品を創っています。
STUDIO OF GLASS -ACADEMY OF FINE ARTS AND DESIGN IN BRATISLAVA-
次は、2010年以降にパトリック・イロ(PATRIK ILLO)さんが教授をしている
ブラチスラバ国立芸術大学(ACADEMY OF FINE ARTS AND DESIGN IN BRATISLAVA)の 、ガラスデザイン学科を卒業したもう1世代若い作家達の作品を見ていきましょう。
アンドレイ・ヤンチョヴィッチュ(ANDREJ JANČOVIČ 1986-)の幾何学形態を追求や、パヴォル・バルコーチ(PAVOL BARKÓCI)の、モチーフを持たないグリッターと合わせたシンプルな形態です。
写真左のフィリップ・プラチュコ(FILIP PLAČKO)は、ガラスと金箔に電気を通す作品を制作しました。写真真ん中の、マルタ・ヴィャトラコヴァー・マテイコヴァー(MARTA VJATRÁKOVÁ MATEJKOVÁ 1990-)のガラスの削りカスを固めた作品や、大ガラスを教会で吊るす作品などコンセプチャルインスタレーションはとても興味深いです。
GLASS & DESIGN
では、ここから第二部の「ガラスデザイン」です。スロバキアの大事なパートの一部のみを紹介していきます。これらのプロダクトガラスは主に大きな工房や工場でつくられます。
スロバキアの過去の歴史の中で、100以上のガラス工場がありました。しかし現在は2つの会社だけ(会社の統合も含む)が経営しており、一つが LEDNICKÉ ROVNE にある「RONA GLASS FACTORY」、もう一つが 「LR CRYSTAL FACTORY」です。
「LR CRYSTAL FACTORY」のファウンダー、カロル・ホロシュコ(KAROL HOLOŠKO, 1912-1978)の高機能性を求めた究極のデザインとも呼べるグラスセットは現代でも通じる先端なイメージを感じさせてくれます。
60年代のデザインはシンプルで高価なイメージがあります。国外にマーケットが多かったチェコスロバキアの工房にとって、海外向けに適しているデザインとも言えるでしょう。
ヤロスラフ・タラバ(JAROSLAV TARABA, 1932-2020)は、カロル・ホロシュコのLR CRYSTAL FACTORYの同僚で、同様にシンプルなデザインをしています。
彼はパントグラスと言う酸で腐食させてエッチングしてデザインするセンスや手法を多く採用しています。
スロバキアガラスの顔を代表する一人、デザイナーでガラス吹き職人でもある、ヨゼフ・スタニーク(JOZEF STANÍK ,1908-1986) は、Zlatno Glass Factoryで、Zlata Zuzaana(ゴールデンなスザンヌさん)などのデザインで有名です。ゴールドを基調とした装飾グラスは、チェコスロバキアのオフィシャルプレゼントとして推奨され、国内や周辺国で500万セットを売るという大ヒットをしました。
今回何度も登場している巨匠、ヴァーツラフ・ツィグラー(VÁCLAV CIGLER, 1929)はデザイナーでもあります。スロバキア国民劇場に設置してある100個のプログラムで光を変えるバルブライトの満月ライトは、世界的デザインの賞にノミネートされた程です。
アスコールド・ジャチコ(ASKOLD ŽAČKO, 1946-1997)、彼もアーティストとしてだけではなくデザイナーとしても活躍しました。彼もLR CRYSTAL FACTORYでデザインガラスを発表しています。
アートガラス編では、アートグループ「P.O.P」でパフォーマンスなどもしていたガラスアーティスト、ラツォ・パガーチ(LACO PAGÁČ, 1949)も、LR CRYSTAL FACTORYにてデザイナーとして活躍していました。
多様な才能や、アートと自身との距離感などが絶妙です。
写真左のヨゼフ・コレンブス(JOZEF KOLEMBUS, 1955)
写真中、右のユーライ・ステインフベル(JURAJ STEINHUBEL, 1958-)など、極めて質の高いデザインと技術がみられます。
ACADEMY OF FINE ARTS AND DESIGN IN BRATISLAVA
それでは、ブラチスラバ国立芸術大学 のガラスデザイン学科でパトリック・イロ(PATRIK ILLO)教授の学生だった方達のデザインを見ていきます。
ペトル・デュリッシュ(PETER ĎURIŠ) は二層のガラスの外側をクラックさせる型吹きガラスです。
パトリツィア・シフマノヴァー(PATRÍCIA ŠICHMANOVÁ)は、球体の器を支える台座にフォーカスしています。
イゴール・コヴァーチ(IGOR KOVÁČ)はガラス用の鋸的な機械で切り跡を見せていきます。
ズザナ・コヴァーチコヴァー(ZUZANA KOVÁČIKOVÁ)は、薄い銅板を造形し、それを型にして吹きガラスをする方法で、異種異形のオブジェを展開しています。
SLOVAK GLASS FACTORIES
それでは、スロバキアのガラスデザインファクトリー(ガラス工房、アトリエ、スタジオとも言う)を紹介していきます。
前に記述したように、現在スロバキアに大きなデザインガラスの工房は二つあります。
KATARÍNSKA HUTAにある青い職人軍団のR-GLASSと、 LEDNICKÉ ROVNEにある赤がトレードマークの RONAガラスです。
RONAガラスでは、手作業の工房と大量生産ラインの両方を兼ね揃えており、ショールームやショップも併設しています。
ロナ・国際ガラスシンポジウム(RONA – INTERNATIONAL GLASS SYMPOSIUM)も定期的に開催していて、チェコのIGSの様に、作家は数日間ここに滞在し、制作した作品をギャラリーで展示したりオークションを行ったりします。
以上で第一部となる、20世紀中盤から現代までのスロバキアの現代ガラスにおけるアートとデザインジャンルの紹介を終わります。
ALEKSANDRA STENCEL & PATRIK ILLO
それではまず、アレクサンドラ・ステンツェル(ALEKSANDRA STENCEL)さん個人のGLASS DESIGNを見ていきましょう。
アレクサンドラさんはポーランド人ですが、プロになってからのデザインガラスはほとんどがスロバキアに来てからです。写真はRONAでデザイナーをしている時のプロダクトになります。
セットのガラスは組み合わせ、重ね方、多種多様なデザインがとてもクリエイティブです。用途だけではなく、海外の各国柄などもリサーチしてデザインが構成されていきます。コンセプトとデザインと技術、そして物撮り写真やプレゼンの仕方がとても洗練されています。
ALEKSANDRA STENCEL x GLASS DESIGN
ポーランドのWrześniakにあるガラス会社でのコレクションの作品では鏡の焼き付け技術を発表しました。
スロバキアやポーランド以外でも、例えばチェコの工房、Egermannなどでも作品制作をしています。ちなみにEgermannをはじめ、近年では需要、原料価格高騰、担い手問題などもあり、大きなガラス工房でも閉鎖に追い込まれる会社は少なくありません。
美的オブジェクトと機能性の両方を持つ、アレクサンドラさんのガラス全てに彼女の感性が著されています。
「タップダンサー」と名付けた最新作の一つでは、底部分に粋な計らいが見られる、繊細でオシャレな仕事をしています。このような素晴らしいアイデアに著作権は重要になってきますが、著作権に関わる登録や経費、様々な諸問題はとても複雑で大変です。
液体を入れる「コップ」の機能と定義を、遊び心あるコンセプトでデザインされる作品は、コップの可能性をまだまだ広げてくれるように思います。
ALEKSANDRA STENCEL x GLASS ART
それでは次に、アート的な制作やコンセプトの作品を紹介していきます。
上写真の作品はロナ・国際ガラスシンポジウム(RONA – INTERNATIONAL GLASS SYMPOSIUM)で制作したものです。
自身の感情的なポートレートに、その美術性を見出しています。
自分の顔を型取り、それをガラスで表現する手法を追求しています。
写真右はチェコのNovy Borでの、国際ガラスシンポジウム、「IGS」(International Glass Symposium Nový Bor )で制作したものです。チェコの伝統的な装飾手法で、高温で焼き付けるエナメル素材を、ガラス表面の装飾部分に使っています。
自分のポートレートを用い、シェークスピア戯曲のハムレットに出てくる、オフィーリアを描いたミレーの絵画がインスピレーションになっています。
PATRIK ILLO x GLASS DESIGN
それでは次に、パトリックさんのデザインガラスの作品を見ていきたいと思います。
ガラス会社RONAでの機械生産の仕事から見ていきます。
こちらは手作業での彩色になっています。
こちらは手作業の仕事で、ワインのデキャンタです。曲線とデザインの違いで用途が違う使用ができます。ガラスと有機性の組み合わせが手仕事ができる特徴であり、面白みを生み出していると思います。
写真左の「Soap Bubble Glasses」は、有機的な凹みとグラス表面に手作業で金属加工を施していて、泡のような艶と反射を見せてくれます。写真の右の面白い特徴は、花瓶の中心はガラスの塊で、外側の二つの袋状のスペースに花を生けている点です。
常に「ガラス」や「器」に対して、その既成概念からどう逸脱し、遊び心とデザイン性を与えて新しいものをつくっていくかが、コンテンポラリーのガラスデザインの面白さの醍醐味でもあります。
ガラスが精製加工される前の生の状態と完全に人工的に精製されカットガラス加工が施されて部分のコンビネーションで、ガラスが進化していく様がコップに込められています。
チェコのガラススタジオ、ŠTĚPÁNEKで制作したもので、女性をイメージした少し変わった花瓶です。
PATRIK ILLO x GLASS ART
それではパトリックさんのアート的ガラスの作品を見ていきます。
ガラスができる可能性や限界を追求するフォルムや手法が多く見られます。世界各国で展示をするパトリックさんですが、運送や展示をする際に何個か壊れてしまうものがあるほどガラスの扱いは難しく繊細さが求められます。
ガラスのインスタレーション、ガラスさえ使わないコンセプトの作品など、様々なチャレンジから新しい発見が生まれます。
ILLOLA
最後に二人の共同ブランド「ILLOLA」の制作を紹介します。名前の由来は、パトリックの苗字ILLOと、アレクサンドラのポーランドでの短い呼び名がOLAから名付けられています。一緒に考えて制作していくことは、一人では思いつかないアイデアやコンセプトが生まれる化学反応が起きます。
こちらは「シークレットガーデンプロジェクト」と名付け、伝統的な装飾技術とその視点、人と自然の関係を切り口につくられたものです。デコレーションは、自然と人間のメタファーとして捉え、不思議でユーモアのある、人間と虫などの出会いが描かれています。
生物多様性もキーワードとして、人間と動植物の関係性の良し悪しのイメージが投影されています。クラシックなパントグラフデコレーション手法を採用しています。画像イメージが二次元から飛び出して、3次元のガラスの花瓶があたかも虫に食いちぎられたように加工されています。
こちらはパンデミックのステイホーム時に、毎日二人でドローイングを続け、その1000以上あるドローイングと、そこから抽出されたアイデアをガラスで立体にした展示になります。毎日毎日手を動かし続ける中で、時にそのドローイングの結果に落胆すること、何かを発見することがありました。しかし最後にはいつも感動や驚きがあり、わたしたちの大事なモチベーションになっています。最後にその制作の全てを見せるかたちで個展をしました。こちらの映像で作品が何点か見れますのでご覧ください。
以上で今回のレクチャーを終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
Q&A
Q1:二人で共同制作することは興味深い反面大変なことも多くあると思いますがどういった感じでしょうか?
A1:はい、私たちはしょっちゅう口論もします(笑)。しかしILLOLAでの自分は、別人だと思っていて、それがお互いを許容する受け皿として機能しています。しかし、二人ともが納得できないアイデアは淘汰し、削り落として残ったアイデアを洗練させていきます。常に新しいことが起き、新鮮でクリエイティブある大事なものがあると思っています。
Q2:各自の「デザインガラス」や「アートガラス」、そしてグループでの活動は、各自思考方法やワークフロー、マーケットなどもそれぞれ違うのではと思いますが、その点はどうでしょうか?
A2:そうですね、最近はそれを意識するようになっています。例えばシークレットガーデンシリーズでは、私は工場で働き、そこで手作業やテクノロジーの開発をしながらも「消費者」のことを常に考えなければいけません。消費者が何が好きでどういったものにお金を払ってくれるか、どういったものが許容されるかなどを踏まえ、自分達ができること、もしくはそれ以上のことを捻出しなければいけません。
Q3:デザイン側の仕事は会社がマーケティングをしたり、売れるためのサジェストがたくさんあると思います。対してアート的仕事は頻繁に理解されなかったり販売が困難であると容易に想像できますが、それでもアートガラスを続けていきたいのですね?
A3:はい、もちろんです。例えばILLOLAのシークレットガーデンシリーズは、量産体制ができるテクノロジーにはなりにくく、値段帯や美学などもかなり奇抜です。しかしそこに意味があり、続けていくことが重要だと思っています。
Q4:制作にガラスではない材料を混ぜたり、ガラスを全く使用しない作品もありますが、並行して続けていくことは難しくないでしょうか。
A4:それはありますが、まず他素材の製作部分は各部門のプロが仕上げることがあり、つまり全ての部門でエキスパートになる必要はなく、コンセプトやアイデアが重要になります。
Q5:お二人のように、様々なことをすることに若い作家も憧れていると思います。何かアドバイスなどはありますでしょうか。
A5:ただただ仕事をすること、それだけですね。例えば私が学生だった時、自分で全ての仕事をしてみたかったことを覚えています。しかし卒業後は、他の専門家に制作はお願いする方法をとっています。しかし、学生時に培った技術やノウハウは卒業後のデザイナーとして働く際には絶対的に大切な要素になっています。
Q6:パトリックさんは沢山の大学生を卒業させ、作家を排出してきたと思いますが、卒業後の学生が作家になっている状況をどうみていますか?
A6:端的に、アーティストになることはとても難しいです。現代には多くの作家がいますし、続けていくことも簡単ではありません。「ある程度の資金があること」、「ラッキーでハッピーであること」、そして「一生懸命仕事すること」が重要です。
Q7:ガラス業界の将来はどうなっていくと思いますか?
A7:やはりAIがどのように世界を変えることが関係しているのではないかと思います。AI時代において、個人的に思うことはアートは「何か特別なつまらないもの」種類のものが必要なのかと思います。アートに全く新しい違うものが必要なのではと考えています。
Q8:最後に、ブラチスラバ国立芸術大学に入学したい場合、スロバキア語が必須でしょうか?
A8:いえ、英語での試験や入学が可能です。ぜひ学生課に問い合わせてスロバキア留学にチャレンジしてみてください。