アート留学の疑問をデータと経験から解決します

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芸術・アート・デザイン関係の学生で、留学に興味がある人は多いのではないでしょうか。ところが「いざ留学」といっても様々な心配事が頭をよぎり、躊躇してしまう方も少なくないでしょう。しかし、ここで諦めるのは非常にもったいないです。

筆者は学生時代にチェコ共和国へ留学しました。それが大きな転機となり、現在もチェコのプラハに住み、アート活動で生計を立てながら生活をしています。

一言に留学といっても方法は様々です。自身の大学制度を利用した交換留学や、大学を休学して渡航する私費留学、または現地大学への入学など、多岐にわたります。まずは情報を集め、ポジティブに吟味しながら目標に向かっていきましょう。

本記事では数々の疑問や心配をもとに、留学を勧める理由を書いていきます。

日本人の留学状況

みなさんは毎年どのくらいの方が留学されているかご存知でしょうか。独立行政法人日本学生支援機構が実施している「協定等に基づく日本人学生留学状況調査」を見てみましょう。

大学等が把握している日本人学生の海外留学状況は、2018(平成30)年度で、115,146人(対前年度比9,845人増)となり、留学生数の多い国・地域は、アメリカ合衆国19,891人(対前年度比364人増)、オーストラリア10,038人(対前年度比159人増)、カナダ10,035人(対前年度比595人増)でした。

定等に基づく日本人学生留学状況調査

この中で芸術分野への留学生は、確認できているだけで年間1230人。毎年これだけの人が様々な障壁を乗り越えて留学されています。

留学費用の目安

交換留学・私費留学、公立・私学、留学期間など、条件によって留学費用は大きく変わります。今回は、都市部で1年間の私費留学費用の概算を比較します。あくまでも概算ですので、参考程度にお願いします。

アメリカの場合

学費:400万円程度
滞在費:100~130万円程度
渡航費:10万円程度
――――――――――
合計:500万円以上

SVAを筆頭とした有名私立校だと、学費は年間700万円程度とも言われます。

イギリスの場合

学費:300万円程度
滞在費:80~100万円程度
渡航費:10万円程度
――――――――――
合計:400万円以上

イタリアの場合

学費:60~100万円程度
滞在費:100万円程度
渡航費:10万円程度
――――――――――
合計:200万円以上

フランスの場合

学費:35~150万円程度
滞在費:200万円程度
渡航費:10万円程度
――――――――――
合計:300~400万円以上

学費は、国公立か私立かによって大きな違いがあります。

ドイツの場合

学費:0~20万円程度
滞在費:100万円程度
渡航費:10万円程度
――――――――――
合計100万円以上

チェコの場合

学費:0円
滞在費:80万円程度
渡航費:10万円程度
――――――――――
合計90万円以上

学費0円の魅力の裏には、チェコ語での試験突破など様々な条件があります。詳しいことはいつか書いていけたらと思っています。

英語圏外でのコミュニケーション

留学費用の目安を見て分かる通り、アメリカやイギリスなどの英語圏は留学費用が高額であるため、英語圏以外の国を留学先候補として検討されている方も多いのではないでしょうか。そのため、留学先の言語が不十分なまま渡航し、大学や大学院への留学前に語学学校で言語を学ぶケースもあります。その場合、現地言語習得までのコミュニケーションなど、言葉の壁が心配になるのではないでしょうか。

筆者の住むチェコ共和国の公用語はチェコ語です。しかし、多くのチェコ人が英語を話せるため、チェコ語ができなくても生活に困ることは少ないです。周辺国のドイツやオーストリアも英語が母国語ではありませんが、多くの人は英語を話すことができます。日本人の英語力は全体的に低いのが現状です。それに対してヨーロッパ人は、家庭・教育・環境の違いにより各個人の英語力に大きな差があります。しかし、英語が得意でない人でも、日本人の平均的な英語力よりは高いので、現地言語ができないからといって心配しすぎる必要はないと思います。

余談ですが、2019年にEFエデュケーション・ファーストという国際語学教育期間が行なった調査によると、日本人の英語力は英語圏を除いた国の中で53位という非常に低い結果です。ヨーロッパにある国の大半は、日本以上に英語が通じるので安心してください。

必要な留学期間

一般的な留学期間は、1ヶ月・半年・1年・2年が多いと思います。滞在期間が長くなるにつれて、出会う人や体験できる事が増えていくため、留学も量と質は比例すると考えます。海外移住の礎を築きたい人や、学びたい内容がはっきりしている人は長期の留学をお勧めします。一方で、若いうちに色々な経験をしてみたいという人は、短期間でも十分楽しめます。

ただし、大切なのは留学中の期間だけではありません。留学から戻った後に、自身の中で育つ気付きもあるでしょう。学びたい内容や予算などを考慮し、自分にとって最適な期間を設定できると良いですね。

留学に意味はあるのか

留学する意味、これは留学に興味を持つ全ての人が気になるポイントでしょう。費用や期間など大きな投資が伴う決断だからこそ、意味があるものであって欲しいと考えるのは当然です。ここからは筆者が留学で得られたことを挙げていきます。

能力

・語学力・伝達力が身に付く。
・語学的な理解が相手と釣り合っていない場合、相手を理解しようとする洞察力や感覚が研ぎ澄まされる。
・相手にわかりやすく、はっきりと言葉で伝えられるようになる。
・今まで暮らしてきた環境とは違う場所で生活することで生活力が身に付く。

日本人である意識

・日本や故郷を違う視点から考えられる。
・日本と外国を比較し、双方の良い部分を選択できる。
・日本にいるときより自己について考える時間が増える。
・単一民族の島国と、民族が混ざった内陸国との文化のギャップを感じる。
・周りの人から “日本人” の〇〇さん、とカテゴライズされる。
・“日本人” と言った時の周りの反応が良く、日本人で良かったと思うことが多い。

精神面

・日本や故郷を違う視点から考えられる。
・日本と外国を比較し、双方の良い部分を選択できる。
・日本にいるときより自己について考える時間が増える。
・単一民族の島国と、民族が混ざった内陸国との文化のギャップを感じる。
・周りの人から “日本人” の〇〇さん、とカテゴライズされる。
・“日本人” と言った時の周りの反応が良く、日本人で良かったと思うことが多い。

外国滞在の良さ

・日本では食べられないもの、見られないもの、行けないところなど、珍しい経験ができる。
・外国人留学生、現地学生、日本人留学生など様々な人と出会える。
・外国であるという非日常な現実のおかげで、常に緊張感を持ち “今” にフォーカスできる。そのため、「頑張らなくては」と毎日のように思える。

留学を勧める一番の理由

上述したように、留学では日本にいては出来ない経験ができます。しかしながら、筆者が留学を勧める一番の理由は、将来活動できる範囲を広げられることです。

大学卒業後に、日本で仕事や制作活動をしながら、活動範囲を海外へ広げることの難しさは並大抵ではありません。時間、金銭、人脈など、大きな壁が立ちふさがります。しかし、留学では比較的簡単に人脈と語学力を手に入れることができます。留学後に現地へ移住した人は、駐在員として外国に住み出した人よりも圧倒的に現地の友好関係が多くなります。ローカルな生活とローカルな交流がより可能になるのです。

まとめ

留学には大きなメリットがあります。もし海外でのアーティスト活動に興味があるなら、留学をすることを強く勧めます。様々な留学方法を紹介しましたが、どれを選んだとしても、あなたがポジティブでいれば色々なものを見つけられるはずです。

コロナウイルスの影響で「今後、留学がますます難しくなる時代」になっています。見えない国境や民族の分断、自国の存続さえ危うくなってきたこの時代に、国は保守的、閉鎖的になっていくからです。ですから、今あなたに留学したい気持ちがあり、行ける環境が整っているならば、是非そのチャンスを生かしてください
人生は一度きり、日々噛み締めて生きていきましょう。

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