皆さんは「学位」について、どのくらいご存知ですか。学位は海外の大学へ進学を考えている人にとって、非常に大切な知識です。志望校を決める前に、留学先と日本の学位について把握しておくことを勧めます。この記事では、日本とヨーロッパにおける学位と教育制度の共通点・相違点について書いていきます。
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日本の教育制度と学位
一般的に日本では、9年間の義務教育で基礎的な教育を受けたあと、高校へ進学します。高校は、大きく分けて専門学科と普通科がありますが、全国の高校生の約7割が普通科で総合的な教育を受けているそうです。高校卒業後は、大学などの高等教育機関へ進学ができます。ここで専門的な学びを深めることになるでしょう。
そして、高等教育機関を卒業した人が取得できるものが「学位」です。下記の表では日本の大学・大学院の修業年限と、取得できる学位をまとめました。
修業年限 | 学位 | |
4年制大学 学部 | 4年 | 学士 Bachelor / B.A |
大学院 博士課程 前期 | 2年 | 修士 Master / M.A |
大学院 博士課程 後期 | 3年 | 博士 Doctor / Ph.D. |
ヨーロッパの教育制度
じつは大学・大学院の修業年限と学位は、日本とヨーロッパで大きな違いはありません。しかし大学までの教育システムの違うため、大学での学習内容に差が生じます。ひと口にヨーロッパと言っても、50を超えるヨーロッパ諸国の教育制度は国により様々です。今回は筆者の住むチェコ共和国を例に紹介します。
チェコ共和国では、日本と同じく6歳からの9年間が義務教育です。しかし9年間同じ学校へ通うため、日本の中学1年生は、チェコの7年生にあたります。義務教育を終えたあとは高校で専攻分野を選択します。
そして、日本との差はここにあります。この専門高校の専門性が非常に高いのです。なんと「ガラス芸術専門」や「石彫専門」といった限られた分野に特化した4年制高校があるのです。「ガラス芸術専門」では、ガラスの化学記号からガラス成分の配合の仕方を学びます。デザイナーや企業とコラボしたり、アーティスト・イン・レジデンスに招致された外国人アーティストと交流する機会があったりします。ちなみに、自国でガラスの大学を卒業した後に、チェコのガラス芸術専門高校へ入学した韓国出身の友人もいます。
このように、国によって大学入学前の下地が違うのです。この違いは大学の学習内容にも影響します。
ヨーロッパの学位
修業年限 | 学位 | |
大学 学部 | 3年 又は4年 | 学士 Bachelor / B.A |
大学院 博士課程 前期 | 2年 又は3年 | 修士 Master / M.A |
大学院 博士課程 後期 | 3年 | 博士 Doctor / Ph.D. |
上記の表はヨーロッパの大学・大学院の修業年限と取得できる学位です。修業年限にわずかな差がある以外は、日本と大きな違いはありません。
表からは見られませんが、日本との一番の違いは学部から修士課程まで一貫して続ける人が多いことでしょう。
また、ヨーロッパの大学にはDiplomaと呼ばれる修士に相当するプログラムがあります。こちらは学部と修士課程の内容を5年で駆け抜ける制度です。ちなみにDiplomaと修士は同程度のレベルとして認定されています。
留学する課程の選び方
実際にヨーロッパへ留学するとなると、どの課程へ進学するか悩む人も多いでしょう。筆者の留学経験で感じたことをもとに、お勧めの進学課程を紹介します。
学士を取得した人
学部を卒業した人は学士にあたるので、ヨーロッパでも修士課程に進学する資格があります。一方で学部への進学も可能です。
しかし、筆者は修士課程への進学を勧めます。なぜなら、学部は単位を取るのが大変だからです。日本と違いヨーロッパの学部は、進級でもふるいにかけられます。
また、現地学生には高校で身につけた専門的な下地があるため、授業もどんどん進んでいきます。単位を取得できず退学になる人も多いです。
もちろん修士課程も簡単ではありませんが、学部よりも奨学金が通りやすいというメリットがあります。金銭的な安心を確保できるため、勉強に集中できる環境を整えやすいでしょう。
修士を取得した人
修士課程と博士課程、どちらもお勧めです。
留学先でも修士を取得すると、2つの修士を持つ「ダブルマスター」と呼ばれ、世間的な評価につながります。
博士については言うに及びません。博士はアカデミーの最高学位です。国によりますが、休学を含め8年間在籍することができます。ちなみに、日本と違い休学は無料です。この期間に卒業制作や博士論文、その他単位を全て取得すれば良いのです。論文や大学独自の課題をこなし3〜4年ほどで取得できますが、修士に比べ取得はさらに困難を極めます。
まとめ
今回は、学位をもとにしたヨーロッパの教育制度の概要でした。もちろん大学ごとに細かな制度は違います。ぜひ皆さんも興味がある大学を調べてみてください。
それではまた別の記事でお会いしましょう。