【実体験】ヨーロッパでアーティスト活動をするメリット・デメリット

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皆さんはヨーロッパでアーティスト活動をしてみたいと思ったことはありますか?

美しい街並みや歴史を感じる建造物、豊かな自然などヨーロッパにはアーティストにとってインスピレーションを刺激される要素がたくさんあるように思います。ヨーロッパは多くのアーティスト、アートを愛する人にとって憧れの土地ですよね。

しかし当然ながら誰もが羨むメリットだけではありません。海外、特にヨーロッパでアーティストとして活動するということは時にデメリットも抱えています。

今回はヨーロッパでアーティスト活動をする上でのメリットとデメリットを実体験に基づいてご紹介します。

ヨーロッパでアーティスト活動をするメリット

1.車で隣国に行ける

ヨーロッパ内は隣の国に行くのが東京都から静岡県感覚くらいです。例えばチェコ共和国の首都プラハからは車で数時間でドイツ、オーストリア、ポーランド、スロバキアに行くことができます。欧州内はLCCでも簡単に近くの国に行くことができ、各国で国立の美術館、文化の公益費が出るアートイベントに訪れることができます。シェゲン協定の加盟国内なら出入国検査なしで国境を越えることができるので、より気軽に行き来することができるのも嬉しいですよね。

シェンゲン圏(シェンゲンけん、: Schengen Area、: Espace Schengen)は、1985年に署名されたシェンゲン協定が適用されるヨーロッパの26の国の領域。シェンゲン圏では渡航者が圏内に入域、または圏外へ出域する場合には国境検査を受けるが、圏内で国境を越えるさいには検査を受けないことになっており、この点で単一の国家のようになっている。

出典:Wikipedia シェンゲン圏

ヨーロッパは芸術の歴史も古く、国民のアートに対する意識も高い傾向にあります。そのため、日頃からアートに敏感な人たちと接する機会が多いことはヨーロッパで活動するメリットなのではないかと思います。

また、ヨーロッパはアメリカなどとは違った国際色があります。国同士が繋がっているので、普通に問題なくヨーロッパ内の隣国の人が住んでいたり仕事で来ていたりします。国境近くに住んでいる人は、自転車で隣の国のスーパーマーケットに行ったりするくらいです。

言語は英語が中心ではなく、各自が2~3カ国語話すことができ、それを混ぜながら会話したりもしています。アメリカなど他国とは違った国際色の豊かさがあります。いろいろな国の人と知り合う中で様々な国の歴史や文化を知る機会にもなるので勉強、刺激にもなります。

2.新しい制作に挑戦できる

作品づくりに使う材料や道具など、日本では出会えないようなものに出会えるのも外国で活動するメリットです。日本ではすごく高い素材がこっちでは安く手に入ったり、逆も然りです。

例えば自然の素材を使った作品などを作るアーティストは、外国に行けば自然環境との違いや手に入る素材の違いを感じるでしょう。画材も日本のものと海外のものでは使った感覚が結構違います。ヨーロッパはその土地にもよりますが自然が豊かで、日本では見かけない植物が生えていることがよくあります。ちょっとした気候の違いや動植物の違いもインスピレーションを与えてくれます。

また、その国の有名産物を安く仕入れることができたりするかもしれません。例えばチェコはガラスが有名で、大成哲はガラスを使った作品をチェコで制作しています。これを読んでくれているアーティストの方が何を作っているかにもよると思いますが、ヨーロッパに来ることで新しい制作に挑戦するきっかけが得られるかもしれません。

3.活躍できる市場が2つになる

日本でもアーティスト活動をしていた人にとってはもちろん、そうでない人にとっても海外でアーティスト活動をすると必然的にマーケットが2ヵ国以上に広がる可能性を秘めています。特にヨーロッパは周辺国との行き来もしやすいので、複数の国でマーケットを広げることができるでしょう。例えばヨーロッパに来てから現地のギャラリーと契約する機会があるかもしれませんし、現地のアートフェアに参加できるかもしれません。同時に日本とのコンタクトが取れれば日本の展示に参加することは十分可能ですから、日本の人にも作品を見てもらう機会を作ることもできます。複数の国のマーケットを持つことはアーティストにとってこの上ない強みです。もしかしたら日本人にとってはそうでもなかったあなたの作品がヨーロピアンにとってはエキサイティングかもしれませんしね。

それと同時に、どちらのマーケットにも属しにくくなるのも事実です。日本のマーケットには「海外在住」のレッテルが貼られるかもしれませんし、ヨーロッパのマーケットには「外国人」のレッテルが貼られるかもしれません。多少のデメリットもありますが、ともあれ2つ以上の国を跨ぐということは、2倍以上の可能性を秘めているということです。

ヨーロッパでアーティスト活動をするデメリット

1.作品の輸送費用がかかる

日本とヨーロッパの2つを拠点に活動できることは大変大きなメリットですが、ヨーロッパで作った作品を日本に運ぶことはとても大変です。特に彫刻家など物質系のアーティストは郵便で送ると結構高くついてしまいます。植物を使うアーティストは種子や木が検疫で引っかかる可能性もあるので注意しなくてはいけません。輸送中に作品が壊れてしまった経験もあります。

日本で展示をすることになった、作品が多くなってきて日本の実家に送らなければいけなくなった…など理由は様々あると思いますが、海外でアーティスト活動をする以上避けては通れない問題なのではないかと思います。

2.外国人であるということ

外国人であるということはメリットでもあり、デメリットでもあります。

ひとつは言葉の壁。言葉の壁は人間関係の壁です。ヨーロッパのほとんどの人は英語を話すことができるので、大抵の場合最初は英語でのコミュニケーションになると思います。しかし、ヨーロピアンにとっても我々日本人にとっても英語は母国語ではないことの方が多いので、意思の疎通が完璧にできないかもしれません。アートにおいて表現の微妙なニュアンスを伝える時など、苦労することもあるでしょう。

また、アートやその評価は作品だけではなくアーティスト本人の面白さでも決まります。ヨーロッパで日本人としてアーティスト活動をしていることはレアキャラではあるので、それを面白いと思ってくれる人たちにとってはメリットですが、マイノリティなことをやっていること自体がデメリットにもなり得ます。

ヨーロッパのアーティストコミュニティに参加することが難しかったり、日本で築き上げたコミュニティから疎遠になってしまうことも考えられます。初めのうちは孤独に感じてしまうこともあるかもしれません。

3.日本との時差

例えば日本のギャラリーとの打ち合わせ。テレビ電話で会議することになると日本の時間に合わせてこちらは真夜中に電話しなければいけないかもしれません。日本にいる人と仕事を進める上で時差を常に念頭に入れなければいけないのは結構面倒くさいデメリットです。

ヨーロッパと日本の時差はロンドンと日本で9時間、こちらが朝起きた時には日本はもう夕方です。「世界を跨いでいる以上時差は当たり前じゃん」と簡単に思うかもしれませんが、時差が違うとコミュニケーションが意外と取りづらく感じたり、物理的な距離以上に相手との心の距離を感じてしまうこともあります。

日本のコンペや助成金の応募の際にも、締め切りを日本時間で考えなければいけなかったり、細かいところでは提出日を日本時間に合わせて記入したりなど、時差が生じる上で気をつけなければいけないことが結構あります。ちなみに、応募費用がかかるコンペで、海外在住は無料というコンペが多くあり、それはメリットですね。

色々あるけど、ぜひ体感して欲しい。

以上がヨーロッパでアーティストとして活動する上でのメリットとデメリットでした。

日本は島国で、海外の人と接する機会もこちらほど多くはないですし、日本語以外の言語でコミュニケーションを取ることも日本以外の文化や歴史に触れることも難しいです。その点ではヨーロッパはたくさんの経験ができる素晴らしい土地なのではないかと思います。

ヨーロッパに来れば当然日本人は外国人で、外国人として生活する不便やもどかしさもあります。しかしそれも良い経験になるので、総じてヨーロッパに住むことはとても面白いはずです。

もし渡欧を考えている人がいたら、ぜひ一度はチャレンジすることをお勧めします。

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