これから「現代アーティストとして活動する」という方にポートフォリオの組み立て方・作り方をご紹介します。
前回、テーマやつくりたいものが定まっていな人向けに、ポートフォリオの役割・方向性を説明しました。
人気【第一回】アーティストのポートフォリオとは?アート・美術における役割・概要
今回は、まだキャリアが少ないアーティスト向けに、コンペや展示向けに作るポートフォリオ について説明していきます。ポートフォリオ作りは人それぞれです。あくまで、私のやり方であって、絶対ではありませんので参考程度に読んでいただけたら幸いです。
*今回は紙、PDFで作るポートフォリオを想定して紹介します。
目次
ポートフォリオで必要な媒体と形式

ポートフォリオ形式は、PDF形式で作り、WEBサイトリンクがそこにあれば、十分な内容だと思います。
PDFは「Portable Document Format」の略であり、最大のメリットは異なる端末、環境で開いても同じように見れることです。ほとんどソフトは、PDFに変換することが出来ます。
助成金の申請書類やコンペに出す形式は、A4サイズでPDFで出すことが多くあります。もし提出先にフォーマットや形式があればもちろん提出先のフォーマットに合わせる必要があります。
PDF形式で保存していくと、使い回しと保存としていいと思います。
ポートフォリのページ数は、自由ですが大体10枚~20枚程度にまとめるといいでしょう。
ポイント!
・基本、A4サイズで作成。
・提出先のフォーマットに合わせる。
・ページ数は10枚~20枚。
・海外を視野に入れるなら英語のポートフォリオを作る。
・ソフトは自分が使いやすいものを使う!
*ソフトはkeynoteやPowerPointでもOKです。ちょっと本格的にやりたいなら、Affinityシリーズがオススメ。Affinityは買い切り系のソフトであるから、Adobeのように毎月サブスク経費がかかりません。
現在でもやはり自分のWEBサイトは絶対必要です。WEBに関しては3つアドバイスします。
・ドメインを使ったWEBサイトを作る。
・現在、ほとんどがスマホで閲覧される人が多い。
・YouTube、Instagram、Twitterなどソーシャルメディアと連携する。
詳しいことは別記事に書いたので、ここでは省きます。
人気!ポートフォリオサイトって必要?アーティストのWEBサイトの事例と作り方
美術系ポートフォリオを制作するときポイント5つ

基本的な原則は5つあります。
1、作品選びは作品の数より質にこだわる。
2、作品は新しくて重要なものを前に並べる。
3、「カラー・フォント・レイアウト」を統一する。
4、レジュメは簡潔にシンプルにまとめる。
5、複数のパターンを用意する。
は押さえておきましょう。では詳しく説明します。
1、作品選びは作品の数より質にこだわる
今まで作った作品を全部載せてもいいですが、やはり量より質です。例えば、写実的な絵画を描く画家がいたとします。その中に、パーツが狂った作品を1枚でも載せると“描けない人” と認識します。人はクオリティが低い作品に目が行ってしまいます。
各アーティストの分野・制作スタイルによりますが「最新・最高のもの5作品くらい+自身の過去作品で素晴らしいもの数点」あれば充分でしょう。
それでも、どの作品を選べばいいかわからない場合、相手に説明できるメッセージ性が強い作品を選ぶといいでしょう。例えば「どうしてこの色を選んだのか?」「このモチーフはなんの意図がある?」と言ったどんな質問にも答えれる作品のことです。人にプレゼンするためのポートフォリオでは絶対条件になってきます。
アート作品は、作品を購入すると同時に、生き様や将来性といった「アーティスト、人間性」に投資されます。だからこそ自分の考え、想いをしっかり伝えられる作品を選ぶと良いでしょう。
ポイント!
・作品は質より量。
・コンセプトがある作品を選ぶこと。
2、作品は新しくて重要なものを前に並べる
基本、新しいもの順に並べることをお勧めします。最初の数枚は作者の顔、代表作となってきます。最初のページに、一番見せたい最新の作品を選ぶといいです。
*あえて、古い作品から時系列で見せる人もいます。
プロセス、ナラティブ、ストーリー、思考など、作品コンセプト以外のものでアプローチすることも良いでしょう。
補足ですが、作業工程といったプロセス、例えば「どんな石を選んで、彫って、研磨する…」と言った技術・テクニカルはあまり載せない方がいいかもしれません。アート業界では作家の私的なこだわりや手先の技術が軽視されています。現代アートはコンセプトが重視されます。
私の場合、作品写真以外に、イラストや展覧会風景を見せて、作品の空気感を感じ取れるように作ります。
ポイント!
・基本、新しいもの→古いもの。
・最初のページが重要な作品を載せましょう!
・アイデンティティ・コンセプトで構成する。
3、「カラー・フォント・レイアウト」を統一する
デザイナーのように、ポートフォリオのデザインにこだわる必要はありませんが、見やすさ・世界観・分かりやすさを出す必要があります。
ポートフォリオを見る人は、あなたについて知らない場合が多くあります。ですので見る方は作品に思い入れはありません。つまり、相手はゆっくりそれを見る時間はない、ことを意識する必要があります。
デザインに関しては、下記を押さえておきましょう。
レイアウト → 画像と文字をどんな配置にするか?

グリットに合わせます。無駄な装飾や規則性のないレイアウトは避けましょう。きちんと並べるだけで、見やすさ&わかりやすさが出ます。
カラー → 作品の色は?文字色・背景色をどうするか?
カラーのポイントは「作品が綺麗に見れるか?」に限ります。作品写真の色味を決めていますか?
余裕と興味があれば、作品写真の明るさだけでなく、コントラスト、構図、色などを知るといいです。AdobeのphotoshopやAffinity(画像編集ソフト)を触ってみるのもいいでしょう。
ポートフォリオの背景色は白か黒でいいと思います。
「白黒の背景色が地味」「もっと自分の個性を出したい」と言う場合はフォントを変えるか、見せ方を考えるといいと思います。
フォント →どんな文字を使うか?ゴッシク体、明朝体それともデザイン文字?

気をつける点として、読みにくい&手書き文字は避けましょう。読みやすさが重視です。
「フォント 種類」と検索すると、参考にするといいです。無料のフォントには、商用利用が不可なフォントがありますので、使う前に確認しましょう。
以上です。フォント・カラー・レイアウトのデータは残すといいです。
4、レジュメは簡潔にシンプルにまとめる

ポートフォリオの最後にC.Vを作りましょう。C.Vとは略歴であり、履歴書のように職歴や資格などは記載しません。現代アート、美術、工芸関係などは、
・氏名(あるいはアーティスト名)
・顔写真
・アーティストステートメント (作家としてのビジョン、動機、全体のコンセプト、)
・バイオグラフィー (略歴、C.V)
・活動歴(展覧会、A.I.R、企画など)
・受賞歴(コンペ・助成金など)
・ホームページのURL
・作品所蔵先
・連絡先(メールアドレスなど)
を記載します。
ポイントは、読みやすくまとめることです。受賞歴や経歴はすべて書かず、重要な受賞コンペ、展示、助成金などを選びましょう。
海外クリエイターのレジュメをみると、おしゃれなテンプレートがあるようですが、アートの場合あまり必要ないと思います。読みやすさがあれば、十分だと思います。
ポイント!
・レジュメは、簡単にシンプルにまとめる。
・読みやすいフォントを選ぶ。
5、複数のパターンを用意する
ポートフォリオは、コンペ、レジデンス、メディアなど、相手によって変えていきます。ポートフォリオは、3つに分けられる傾向があります。
・アート系のポートフォリオ
・企業向けのポートフォリオ
・メディア・広告系のポートフォリオ(積極的にメディアに出いく人なら…)
もし「複数のパターンを作るのがめんどくさい」と思うのであれば、1つマスターのポートフォリオ を作り、提出する場所ごとに写真を減らす&ページを調整する方法もいいと思います。
【補足】キャプション例
作品画像と一緒にキャプション(作品情報)。一部ですが、記載例を紹介します。
記載する前にキャプションの以下のことを用意してください。
必要な情報
・タイトル
・制作年
・サイズ / 時間
・メディア / 素材
その他の情報
・制作協力者
・所蔵先
・撮影者
具体例でいうと・・・
日本語 | English |
まねび 2007 ガラス、鉄、LEDライト 100×200×90cm 個人所蔵 撮影:大成哲 | manebi 2007 glass、epoxy、LED light 100×200×90cm Private Collection Photo:tets ohnari |
と書くといい思います。
【まとめ】ポートフォリオは一歩下がって見るべき
知り合いのギャラリスト達にポートフォリオを見るポイントを聞くと
「作家にとっての世界観がしっかりとあるか、その魅力が作品から伝わってくるか」という意見をよく聞きます。
皆さんも作品づくりと同時にポートフォリオをつくりながら自身の世界観を形成していってください。