【第2回】アーティストが考えるポートフォリオ作り方&組み立て方

【第2回】アーティストが考えるポートフォリオ作り方&組み立て方 Articles in Japanese

全2回にわたり、ポートフォリオの概要から作成方法を紹介しています。第2回目の今回では、現代アーティストとしてのキャリアをスタートさせる方へ向けて、ポートフォリオの組み立て方・作り方を紹介します。

ひと口にポートフォリオといっても、目的によりアプローチ方法は様々ありますが、主にコンペや展示会へ向けた紙媒体のポートフォリオを想定しています。今回紹介するのは筆者のやり方ですので、一例として読んでいただけたら幸いです。

ポートフォリオの形式

ソフトウェア

無料ソフトウェア「PowerPoint」や「keynote」で、充分見栄えが良いポートフォリオは作れます。

しかし、もう少し本格的に作りたい人には「Affinityシリーズ」を勧めます。Affinityは買切り型ソフトウェアなので、Adobeソフトのように月額費用がかかりません。

フォーマット

自分に合ったソフトウェアでデータを作ったら、PDFに変換して保存しましょう。ほとんどのソフトはフォーマットをPDFに変換できます。さらに、いつでも編集ができるように生データも忘れずに保存します。PDFの最大のメリットは、どの端末・環境で開いても同じ内容が見られることでしょう。PDF形式で保存しておくと、使い回しが良いです。

コンペや助成金申請へは、A4サイズのポートフォリオをPDFで提出することが多いです。もちろん提出先の規定がある場合は、それに合わせる必要があります。

ポイント!
・A4サイズで作成
・ボリュームは10~20ページ
・WEBサイトのリンクを掲載しておくと良い
・海外を視野に入れるなら英語版も用意

【補足】WEBサイト

紙媒体のポートフォリオと合わせて、WEBサイトを作ると尚良いです。コンペや助成金申請の場合、提出先の規定によってポートフォリオの内容は限られるかもしれませんが、WEBサイトと連携させておくと、他の作品も見てくれる可能性が高まります。詳しいことは別記事に書いたので、ここでは省きます。

6つの作成ポイント 

美術系ポートフォリオを作成するためには、押さえるべきポイントがあります。

1.量より質にこだわった掲載作品
2.アプローチに合わせた構成
3.見やすいデザイン
4.キャプションの書き方
5.レジュメはシンプルかつ簡潔に
6.複数パターンの用意

以上の6つはとても基本的なことですが、良いポートフォリオを作るためには非常に重要です。それでは詳しく説明していきます。

1.量より質にこだわった掲載作品

写実絵画を描くアーティストのポートフォリオに、デッサンが狂っている絵が1枚あったとしましょう。そのたった1枚の作品で、このアーティストは “描けない人” だと判断されてしまいます。人はクオリティが低い作品に目がいくものです。

今まで作った全作品を載せる人もいますが、やはり量より質が大切です。各人の分野や制作スタイルによりますが「最新で最高の5作品+素晴らしい過去作品数点」で充分でしょう。

もしも選定に迷った場合は、相手に説明できるメッセージ性が強い作品を選ぶといいでしょう。「どうしてこの色を選んだのか?」「このモチーフには何の意図がある?」と言ったどのような質問にも答えれる作品です。アート作品は作品そのものだけでなく、アーティストの人間性や将来性に価値を見出され、購入されます。だからこそ自分の想いをしっかりと伝えられる作品を選ぶと良いでしょう。

ポイント!
・作品は、質より量
・コンセプトが明確な作品を選ぶ

2.アプローチに合わせた構成

一番見て欲しい新作を先頭に、年代順に並べる構成がベーシックです。最初の数ページは、作者の代表作と見なされます。あえて古い順に並べて作品の変遷を伝える人もいますが、特別な意図がない場合はベーシックな手法をお勧めします。

作品紹介については、コンセプトを押し出す人が多いです。他にも、プロセスやナラティブ、思考方法などへフォーカスする場合もあります。いずれにせよアピールポイントが的確に伝わるアプローチ方法を取りましょう。筆者は作品写真以外に、イラストや展覧会風景を混ぜ、空気感が感じ取れるように心がけています。

補足ですが、作業工程などのプロセスは、あまり必要ではないかもしれません。彫刻を例に出すと「どんな石を選んで、彫って、研磨する」という部分です。現代アートはコンセプトが重視されるので、技術面は作家の私的な拘りや技術として、軽視されているのです。

ポイント!
・最新作を先頭に、年代順で掲載
・最初数ページが「作者の顔」
・意図が伝わるアプローチ方法

3.見やすいデザイン

デザイナーレベルでデザインにこだわる必要はありません。しかし、「見やすさ・分かりやすさ・世界観」を意識する必要はあります。

ポートフォリオを見る人は、初めてあなたを知る人が多いでしょう。つまり、相手にとって作品に思い入れはなく、分かりにくいポートフォリオをじっくり見るだけの時間はありません。良し悪しは、一瞬でジャッチされる。そのことを常に意識する必要があります。

そして、見やすいポートフォリオを作るために大切なのは「レイアウト・カラー・フォント」の3点です。

ー レイアウト

画像と文字は、グリットに合わせて配置します。無駄な装飾や規則性のないレイアウトは避けましょう。整然と並べるだけで、見やすさと、分かりやすさが出ます。

ー カラー

背景色と文字色の選び方は「作品が綺麗に見えるか?」に限ります。背景色と文字色は白・黒・グレーの無彩色が無難です。もっと個性を出したい人はフォントやレイアウトでアレンジすると良いです。また余裕がある人は、photoshopやAffinityで、作品写真の明るさ・コントラスト・構図・色味を調整してみると一段と完成度が高まります。

ー フォント

読みにくい文字は避けましょう。過度にデザインされたフォントは可読性が高くありません。読みやすさが重視です。また無料フォントを使用する場合、利用規約を確認しましょう。商用利用不可のケースも多いので要注意です。

ポイント!
・グリッドに合わせたレイアウト
・作品が映える色選び
・読みやすいフォント


一冊のポートフォリオを通して、フォント・カラー・レイアウトを統一させましょう。後日新しい作品を追加することを考慮し、使用したフォントやカラーのデータは残しておくと良いでしょう。

4.キャプション

キャプションとは、作品画像に合わせて記載する作品情報です。常に記載する情報と、必要に応じて記載する情報があります。

常に記載する情報
・タイトル
・制作年
・サイズ / 時間
・メディア / 素材

必要に応じて記載する情報
・制作協力者
・所蔵先
・撮影者

以下、記載例を参考にしてください。

日本語English
まねび
2007
ガラス、鉄、LEDライト
100×200×90cm
個人所蔵
撮影:大成哲
manebi
2007
glass、epoxy、LED light
100×200×90cm
Private Collection
Photo:tets ohnari

5.略歴はシンプルかつ簡潔に

ポートフォリオの最後に、C.Vを載せましょう。C.Vとは略歴であり、履歴書のように職歴や資格などは記載しません。現代アート・美術・工芸関係の方が記載する内容は以下の通りです。

・氏名、又はアーティスト名
・顔写真
・アーティストステートメント
・バイオグラフィー
・活動歴
・受賞歴
・ホームページのURL
・作品所蔵先
・連絡先

ポイントは、読みやすくまとめることです。すべての受賞歴や経歴を記載す必要はありません。重要内容を選びましょう。

6.複数パターンの用意

ポートフォリオは、提出先の方向性に合わせて変更しながら使用します。そして、おおまかに区分すると以下の3つに分けられます。

・アート系
・企業向け
・メディア向け(メディアに出たい人)

もし「複数パターンを作るのが手間」と思うのであれば、元となるポートフォリオ を一つ作りましょう。提出先に合わせて、写真を減らしたり、ページを調整したりすれば十分です。

まとめ

全2回にわたって、アーティストのポートフォリオについて紹介してきました。皆さんも作品づくりと同時に、ポートフォリオをつくりながら自身の世界観を形成していってください。今回の記事が皆さんのアーティスト活動の一助になると幸いです。

【第一回】アーティストのポートフォリオとは?アート・美術における役割・概要

【第1回】アーティストのポートフォリオとは?アート・美術における役割・概要

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