【中編:Victoria VR】バーチャルリアリティをネクストステージへ。新たなエコシステムの構築に挑むVictria VRのオフィスに潜入。

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前編では、これから到来する次世代のインフラであるメタバースに焦点を当て、メタバースとは何か。そして、来たるべきメタバース時代に向けて、バーチャルリアリティと仮想通貨の領域を横断し、新たなエコシステムの構築に挑んでいるVictoria VRのプロジェクトについて紹介した。今回の記事では、そんなVictoria VRが拠点を構えるチェコ共和国のプラハのオフィスに潜入し、インタビューした様子をお届けする。

チェコ共和国のプラハ中心部に位置するヴァーツラフ広場。ここはプラハでも指折りの賑わいを見せるスポットだ。そのメイン通りから路地に入っていったところにVictoria VRの拠点がある。オフィスに入ると、とても一等地にあるとは思えない広さの空間が広がり、筆者が見た限りでは、200人くらいは働くことができそうなくらいの場所だった。オフィスの広さに驚いていると、CEOのアンドリュー・ドブルスキーは、「この拠点には3ヶ月前に移ってきたばかりで、これからもっと人を雇うつもりなんだ。広さは1250平方メートル以上あるかな。」と教えてくれた。現在は、半分以上のスタッフがバカンスでいないと言う。それからCEOのアンドリュー・ドブルスキーと共同創業者のアダム・ベンは我々、取材陣をエスコートし、オフィスにある各セクションを案内してくれた。

オフィスを案内する共同創業者のアダム・ベン

建築チーム

まず、訪れたのは、VR内の建築やランドスケープの設計をし、バーチャルリアリティの世界を具現化する役割を担うチーム。今回は、セクションのグリゴリー・マチウニンが、そのプロジェクトについて話してくれた。

取材陣の目の前の机の上に置かれていたのは、VR内の建築やランドスケープの図面などの設計資料だった。

VR内の建築やランドスケープの図面などの設計資料の写真

彼らは、実際の建築家が建築を設計するように、図面やドローイングを作成し、そこから3Dのモデリングをしている。さらに、都市の歴史やランドスケープデザインといった建築分野の知識などリアルワールドの環境も日々学び、参考にすることで、バーチャルリアリティの世界を構築しているのだ。

ただ、バーチャルリアリティの世界は、現実世界とは異なるため、環境問題や現実の都市や建築と同じように機能するかどうかは気にしなくても良いそうだ。

現在、彼らが挑戦しているプロジェクトは、Victoria VRのバーチャルリアリティの世界で始まりとなる島の環境構築だ。取材した時には、島の中心となるCity Centerという区画の3km×3km圏の設計に取り組んでいる真っ最中だった。グリゴリー・マチウニンは、「ここが一番、設計するのが難しい」と語った。

現在、取り組んでいる3km×3km圏が最も設計が難しい

そんな彼に対して、VR内で建築のデザインをユーザーがすることはできるのかと質問すると、VR内で建築をデザインするには、2つの方法があり、自分で設計するか、環境を設計する彼らのセクションが設計するかだが、彼らがオーダーされて設計することに関しては他の5人のセクションのメンバーと話し合っている最中だという。

プロジェクトについて話すグリゴリー・マチウニン

昨今では、建築領域でも、CGソフトやゲーム開発エンジンを用いた3Dモデルの設計やVRゴーグルを使用した建築の内見、さらにはゲーム開発におけるステージの設計などのレベルデザインなど従来のバーチャルリアリティの建築や都市のデザインに対するリアリティの欠如という固定観念が払拭されつつあり、この部門での話を聞いて、筆者はその最先端の事例を目撃したような気分になった。

開発チーム

次に、訪れたのが、VR内のゲームなどのコンテンツの開発を担当するチーム。
このセクションの部屋に入ったときに、目に飛び込んできたのが、
壁のいたるところに貼られた日本のアニメやゲームなどのイラストだ。CEOのアンドリュー・ドブルスキーは、
「このセクションで働く人は、みんなゲーマーで、日本のマンガやアニメが好きなんだ。」と話してくれた。
すると、何やら、部屋に設置されたホワイトボードで、ミーティングが始まった。
内容は、ゲームの開発に関係することのようだ。

壁に設置されたミーティング用のホワイトボード

そして、ミーティングの様子を見た後に、CEOのアンドリューが、メンバーに声を掛けると、実際に開発しているメンバーがゲームのデモンストレーションを見せてくれた。このデモンストレーションにより、開発中のシステムのコンセプトが機能するか試しているのだそうだ。その中には、ゲーム上の演出であるパーティクルも含まれている。また、こういったゲーム開発のエンジンには、Epic Games社のUnreal Engineを採用している。

デモンストレーションの様子

また、こちらが、いま開発しているゲームがメタバースの一部になるのか。と尋ねるとCEOのアンドリューは、「私たちが手がけているのは、すべてメタバースなんだ。」と話してくれた。

このセクションで筆者が感じたのは、
こういった新しいプラットフォームの開発やリリースの初期の段階においては、
そのプラットフォームを愛して止まない、ゲーマーと呼ばれるようなゲーム好きたちの熱意が欠かせないということだった。彼らがツールを作り、それをソーシャル化することで、一般のユーザーがプラットフォームに参加するようになるということだ。このことは、GithubやWordpressなどのオープンソースのプラットフォームにおいて公開されたソースコードを誰でも利用や改良することができるインターネットがもたらした知識の共有、そして、先駆者たちが、プラットフォームの土壌を作る。その後に、様々なユーザーがそのプラットフォームを利用することで、そのプラットフォームが進化を遂げ、新しい共同体を形成していくという流れを汲んだものでもあると感じた。

開発セクションのオレクサンダー・コキーフとCEOのアンドリュー・ドブルスキー

ビジュアルチーム

我々が最後に、訪れたのが、主にVR内のビジュアルの制作をしているチーム。このセクションは、キャラクターなどの3DCGモデリングとテクスチャーの制作に担当が分かれており、それぞれの制作に取り組んでいる。
CEOのアンドリューがまず紹介してくれたのは、キャラクターなどの3Dモデリングの担当者。何をモデリングしているのか彼女に尋ねると、「ゲームのキャラクターゾンビを作っているのよ。」と話してくれた。彼女が使用している3DCGソフトは多くのハリウッド映画やディズニー映画の制作にも導入されているSide Effects Software社のHoudiniだ。

BlenderとHoudiniでの特殊なエフェクトをモデリングしている様子

次に、紹介してくれたのは、テクスチャーの制作に担当者。CEOのアンドリューが「何かやって見せてくれ。」と言うと、彼女は、photoshopを開き床のテクスチャーをディスプレイに表示し、近くからみても、遠くからみても同じに見える床のテクスチャーの精巧さをその場で見せてくれた。

床のテクスチャーを表示している様子

遊び心溢れるハイテクなオフィス

一通り、セクションを案内されると、今度は、オフィスの中庭を案内してくれた。
中庭は、陽射しと風が心地よくリラックスや同僚との雑談には持ってこいの場所だと感じた。

陽射しと風が心地よい中庭

次に、案内してくれたのが、大量のマシーンが壁一面に並べられた部屋。これらの機械は、なんと毎秒20GB、お互いに通信を送ることができるそうだ。

サーバー(PowerShell)は全ての機械を接続させている

また、オフィスには、至るところに、メンバーがくつろげる空間があり、リラックスしながらプロジェクトについて語りあうことができる。

リラックスできる空間がクリエイティブマインドを刺激する
オフィスは1250平方メートル以上あり、快適に仕事に打ち込むことができる

今回の記事では、Victoria VRが構えるチェコ共和国のプラハのオフィスに潜入し、彼らがどのようにプロジェクトに取り組んでいるのかという様子をお届けした。後編では、CEOのアンドリューと共同創業者のアダムにVictoria VRのビジョンや創業ストーリー、そして、今後のバーチャルリアリティはどうなっていくのかインタビューした内容をお伝えする。

【前編:Victoria VR】来るべきメタバース時代を牽引するVictoria VRとは何者か。

【後編:Victoria VR】創業者の二人にインタビュー。Victoria VRの見据える未来とは?

VRの活用事例、ビジネスモデルとは? 欧州VRレポート

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