目次
VRビジネスの現在
コロナ禍により社会がオンラインへと移行し、
それに伴い、バーチャルリアリティーが日常へと浸透してきた。
さまざまな業界でオフラインでのイベントや集客が難しい状況となり、
オンラインで擬似体験を届けられるVRを活用したいというニーズも増えている。
株式会社リプロネクストが日本の20代~40代の男女472名を対象に実施した
「VRに関するアンケート調査」によると、
全体の約8割が、コロナ禍でVRを耳にする機会が増えたと回答した。
では、そもそもVRとは何か。
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VRとは、Virtual Realityの略で、仮想現実と訳されるが、ここには、表面的には現実ではないが、本質的には現実という意味が含まれ、VRによって限りなく実体験に近い体験が得られるということが示されている。VRゴーグルを装着すると、全ての視界が覆われ、限りなく現実に近い世界に没入する感覚が得られる。また、近年はリモコンを操作することによって、自分の動きがVR映像内に反映されることで、よりリアルな体験を得ることができるようになっている。
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VRを活用した事例には、さまざまな利用の仕方が出てきているが、ここでは、大きく4つに分けて紹介しようと思う。
ビジネスにおけるVR
VRは、ビジネスシーンでも多く活用されている。
代表的なものには、不動産の内見や工事現場用の教育コンテンツ、ショッピングの擬似体験などがあり、
今後も他のテクノロジーと組合せて、様々な活用方法が生まれてくるだろう。
教育におけるVR
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昨今、教育現場のデジタル化が進んでいるが、VRを導入することで、
より現実に近い、体験型の教育を行うことができる。
例えば、危険な物質を使った理科の実験などがある。
ゲームにおけるVR
そもそもVRを開発するためのUnityなどのプラットフォームは、
ゲームエンジンと言われていることからVRをベースにしたゲームは数多く制作されており、
中でも、EpicGame社が手がけるFortniteは、
次世代のプラットフォームとされるメタバースに最も近いとされている。
医療におけるVR
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医療の現場でも、VRは活用されている。
スイスのバーゼル大学が開発した「SpectoView」では、
3Dモデルを用いて手術のシミュレーションを行うことができるなど
VRによって医療の発展が期待されている。
今後、VRはどれほどの市場規模となっていくのか。
国際会計事務所のPwCが発行した
グローバルのエンターテインメント・メディア市場に関するレポートによると、
2020年のVRの市場規模は、約18億ドル(約1970億円)で
前年比で31.7%の増加と、全分野でトップだった。
また、2025年までの予測成長率でも年平均成長率は30.3%とトップを走り、
2025年の市場規模は、69億ドル(約7580億円)と見積もられている。
プラハに拠点を構えるVRアトラクション4社を比較
実際にVRを活用したビジネスを主軸としている企業はどうなっているのか。
筆者がリサーチし、コンタクトをとり取材することができたプラハにあるVRアトラクションの会社は4社。
この他に、見つけたVRアトラクションの会社はコロナの影響で廃業したものもあった。
今回は、この4社を比較していこうと思う。
4社の比較に入る前に、VRアトラクションについて説明する。
VRアトラクションとは、ヘッドマウントディスプレイがない、広いスペースがないなどの理由から
多くの家庭では、体験することが難しい本格的なVRのコンテンツを指す。
個人のVRでは体験することができないような大掛かりな規模のVR体験ができるのが特徴となっている。
その反面、施設の維持にかなりの資金が必要であったり、
施設を訪れる顧客一人一人に対面で接客しなくてはいけない労働集約的なビジネスモデルでもある。
VR PLAY PARK
プラハにおけるショッピング、ビジネスの中心地であるヴァーツラフ広場、
そのヴァーツラフ広場沿いのSPARKYS(青い文字看板が目印)にある
VRアトラクションの施設がVR PLAY PARKだ。
ヨーロッパで最も広いバーチャルリアリティを体験できる空間という特徴がある。
入るとすぐにわかるのが、室内の開放感、日本では実現することが難しい天井までの高さと天井窓だ。
この窓の大きさと開放感は、VRアトラクションの多くが賃料が安い地下にあることから考えても珍しい。
チェコ資本ではなく現在はアメリカ人のオーナーのジョージがCEOとして経営を引っ張っている。
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次に、特徴的なのは、バーカウンターとチルすることができる空間。
バーとバーテンダーの女性、カクテルやソフトドリンクのイメージデザインが
全体と統一されていてお洒落さを感じさせてくれる。
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ここで体験することができるアトラクションの特徴は、複数人でプレイすることにある。
筆者は取材陣と一緒にFEELというシューティングゲームをプレイしたが
複数人でプレイするため、広い場所が必要であると感じた一方で、
この空間で、一度にプレイできるグループは5つであり、1日の収益も限られてくることに加えて
設備のメンテナンスやスタッフの人件費などを考えると、収益を上げるのは、大変だと感じた。
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イベント、パーティー、企業の会議や教育目的として貸し切りレンタル。
取材の次の日はあるビートセーバーのゲーマーイベントの開催場所としての
レンタルがあるようで見るからに忙しそうだった。
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夜の営業では、音楽が流れ昼間とは違う雰囲気を醸し出す。
この時間帯では、アルコールからも収益を上げることができる昼夜
それぞれのマネタイズ方法も特徴的である。
DIVR Labs
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DIVR Labsはプラハの観光地にあり、子どもをターゲットとしているプラハでも知名度が高いVRセンターだ。
子ども向けのアミューズメントパークhamleysの一番奥の場所にDIVRがある。
こういったデパートなどの商業施設で、入り口から遠いところに、催事場を設けて、
店舗全体の売り上げを増加を図ることをシャワー効果と言う。
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中に入ると、子ども向けという割には大人も多くいた。その中には子どもの同伴者もいる。100円入れたら5分揺れる乗り物と違い、いま流行りのVRだけに同伴の親も参加するケースがほとんどだった。ここには現在二つのアトラクションがあり、来年にむけて3つ目の恐竜のコンテンツを開発している。
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最も人気なのは、GOREM。チェコのプラハで有名なゴーレムの話を元にしているGoremのVRコンテンツだ。
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ゴーレムとはユダヤ教の伝承に登場する自分で動く泥人形で、ゴーレムはヘブライ語で胎児を意味する。
14世紀の時代のプラハにタイムスリップし、
観光でこの街に来たのなら必ず訪れただろう場所の500年前の世界が観ることができ、
さらに、有名なお話の原作の基となった場所で擬似体験できるという貴重な体験ができる。
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DIVR Labsの特徴は開発者数人が一年かけて制作した自社開発、オリジナルコンテンツだ。
そのひとつがリアルに室内を30分ほど歩いてプレイするVR体験ができるArachnoidだ。
建物の地下1階にあり、建物の敷地分面積を迷路のように30分ほど歩く。これによりかなりストーリーへの没入感は高まっていく。30分間歩き回れる、というのはヘッドセットがケーブルレスということである。それはつまり、このVR施設200平方メートル全体がガーディアンの中(ヘッドセットがワイヤレスで反応するプレイエリア)の中にある、、という膨大なデータ送信量を誇る空間内なのである。
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大きい室内をパーテーションで迷路的に区分けし、VR上でストーリーが展開していくことに加えて、グループを別々の部屋に誘導できる管理システムを作ったことで、同時間内に何組ものグループが同じ室内で楽しめる回転率がいい方法でもある。しかし、他のグループが同時にプレイしているので、お互いの声が聞こえなくなってしまう騒がれてしまうようなアトラクションのコンテンツは難しい。
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この施設は、子ども向けのアミューズメントパークの中にあり、集客面で困ることはなく、
複数のグループが同時にプレイすることができるアトラクションがあることから、
他のVRアトラクションの施設と比べると、収益を出しやすいかもしれない。
Virty
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Virtyはプラハ中心地から20分程度離れた旅行者が少ないローカルな場所に位置している。Virtyの設立者のフランチシェックは、ゲームをこよなく愛している。自分が子どもの頃にゲームを楽しんだように、最新のVRゲームをプラハの子どもや年配の方にも新しい体験をしてもらいたい思いがあるため、Virty はこの街に住んでいるみんなに気軽に楽しんでもらいたいというコンセプトで運営している。
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もう一つの特徴は、個人でVRの製品を買いたい人のリサーチ場所として機能しているところだ。これも、プレイヤーの立場に立つ彼だからこそのアイデア。買いたいが迷っている人やもう少し実際に使ってみてから考えたい人へのニーズを叶えるため、常に最新なものを取り揃えている。チェコにはここにしかない、というVR機材などもあった。ちなみに一定期間の個人持ち出しのレンタルサービスも提供している。
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この取材前まで、コロナ禍の規制の影響をもろに受け集客が厳しいようだ。しかしターゲットは観光客よりもプラハ住民、地域に密着している小規模施設なビジネスなので、ローカルの家族、少年達の遊び場としてぜひ活用してほしい。
AVATAR herna
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AVATAR hernaも中心地から20分ほど離れた場所にあり、
地下鉄 Českomoravská駅のすぐそばショッピングモールGalerie Harfaの横のビルの2階に拠点を構えている。
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入口から中に入ると、受付があり、
さらに奥に行くと、3つのゲームルームに分かれており、そこでVRを体験することができる。
そのうちのひとつの部屋には、日本のゲームセンターで見かける
アーケードのレースゲームマシンがあり、VRのレーシングゲームを楽しむことができるようだ。
部屋は日本のカラオケルームのようになっており、複数人で貸し切ることができ、
ドリンクや食べ物をオーダーすることもできる。部屋を貸し切り料金で払うシステムなので、
何人かで利用する方がお得ということだ。
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部屋の予約は、Avatar Hernaのウェブサイトでできるので、プラハでVRを楽しみたいと思ったらすぐに予約できる。Avatar Hernaが提供しているゲームの種類は200以上あり、ジャンルもシューティングゲームから教育系、ホラー系と幅広く揃っている。時間単位の料金であるため、つまり何種類でもゲームをトライしていいとは有り難いところ。
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今回私が選んだのはFINAL SOCCERというゲームだ。
最初にメニューを選んだときには、フリーキックをするゲームなのかなと思ったら、
実はなんと自分がゴールキーパーで、フリーキックやPKを止める内容のゲームだった。
徐々に慣れていき、ゴールキーパーの気分を楽しむことができた。
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Avatar Hernaは私達一般人ももちろんターゲットだが、学校と提携して、小学生達のVR体験をさせたり、VRのキッズキャンプをしていることがユニークである。教育に寄与しているイメージブランディングとサブスク的顧客を獲得する戦略は素晴らしい。
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また、大学や研究者と協力関係にあり、彼らからVRの技術に関するテクニカルな指導やユーザー体験観点での意見を提供して貰ったりVRのコミュニティやMRの会社とも繋がりがあるそうだ。
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Avatar Hernaは他の施設とは異なり、この施設での集客も行いながら、
VRを活用した他の事業も展開しており、
リスクを分散した経営をしているという印象を受けた。
VRビジネスの今後
ここまで、プラハに拠点を構えるVRアトラクション4社を比較してきた。ターゲット、マネタイズ方法、VRの使い方など、そのビジネスモデルに多様性があり、VRの幅広い可能性を体験した。
いずれの会社も、客に体験を提供して時間を収益にするシステムを持つ。オフラインでの集客や営業も行っている様子であった。VR施設が未だ一昔前の遊園地やゲーセンの延長線上にあるポジションは、VRが未だ体験版だからである。
今後コロナ下の影響もあり、VRの日常使用が主流となってくる場合、私たちのVRアミューズメント施設へ求める期待値は上がると同時に、より気軽に立ち寄ろうと思うのではないだろうか。
VRでオンタイムで友達や知らない人とプレイするユーザーの一体感は、これまでの人間のコミュニケーションの在り方を新しくするかもしれない。
今後さらにブーストしていくバーチャルワールドの動向をArtSurviveBlogは注目していきたい。