「ドイツ、現代アート、大学、語学」 海外留学生: 宮野賢介さんへインタビュー 後編

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写真:宮野さんの映像作品

前回より、前編・後編の2記事に渡り、ドイツ留学中のアーティスト宮野賢介さんが語る「ドイツとアート留学について」の話をご紹介しています。後編では、入学試験や合格後の生活卒業後の展望について伺いました。

写真 : 宮野さんのドローイング作品

20枚のドローイングで判断される試験

少しギャンブルなシステムだと感じていますが、だからと言って不満は抱きませんでした。むしろ国が違えば受験の仕方がこんなにも違うのかという事に感心しました。それに大学の受験方法は、これだけではないんです。 

聴講生制度を利用して、聴講生として1〜2年間授業に参加した後に、教授と信頼関係が出来て入学を認めて貰うケースはよくあります。

聴講生制度
主に、大学において特定の授業を聴講する資格を有した非正規学生。正規の学生としては認められず、また一般的に単位の認定は行われない。聴講生になるために、日本では大学ごとに必要な手続きがある。一方、ヨーロッパではポートフォリオを見せ、教授に参加を認められる必要がある。

合格後もドイツ語は不必要? 

試験内容がドローイングだから合格後もドイツが不要かと言うと、そんな事はありません。多くの美大では合格してから2年以内に、ドイツ語でB1〜B2レベルの語学学校の修了証明書を提出しないといけません。しかし、Bレベルは比較的楽な方なので、半年〜1年集中して語学学校に通っていたら合格できます。

僕が通っているミュンスター芸術アカデミーは、C1の語学試験に合格する必要がありました。そのため外国人の大学入学希望者に向けて開設している、大学付属の語学学校の試験用集中コースに通っていました。 つまり、僕は語学学校に合計2年半通っていたことになります。

外国人学生の全員がドイツ語を話せる?

語学試験に合格する必要はありますが、Bレベルを取得しても言語が不自由な人はいます。そして、その影響は作家のスタンスや、作品の表現にも現れてくるように思います。

語学が不得意と語っていた作家さん達の作品を観ると、一目でコンセプトが理解できるような作品づくりに転換していった人もいれば、言葉を遮断し作品と向き合う姿勢が強くなったんだなと感じる人もいます。

宮野さんの言語習得後の変化

僕が実感している変化は、自分の作品のコンセプトを台本なしで伝えられるようになったことです。さらに、授業のディスカッション内容が分かり、自分の意図、ものの考え方や捉え方がより深くなりました。 
 

今後のドイツでの予定

最長10年使用できるドイツの学生ビザのうち、僕に残されているのは後2年です。なので、その時間を有効活用していこうと思います。 ミュンスターの美大では、助成金有りの海外プログラムを始めとして、学生に沢山のチャンスが与えられます

今現在は、ミュンスター芸術アカデミーのエラスムス(EU内での交換留学制度)を利用し、イタリアの美術大学に半年間通っています。そのような機会を大学在籍中にどんどん活用していきたいです。 

卒業後の進路 

コロナ渦ですが、教授からアーティスト・イン・レジデンス情報をよく教えてもらうので、応募するつもりです。もし、それが難しかった場合は、職業訓練などを受けてドイツで就職しようかと考えています。 

フリーランスか、就職か

卒業後に、フリーランスアーティストとして活動をしていく考えがあった時期もあります。しかしポートフォリオを見直したところ、自分の作品はインスタレーションや映像などが多く、販売が難しいものばかリでした。そのため、フリーランスでの生活は現実的でないと考えるようになりました。 

フリーランスの傍らにバイトで生計を立てるとしても、バイトでも就職でも制作に充てられる時間は、ほぼ変わりません。なので、お金がなくて精神が不安定になることよりも、精神を安定させて金銭面で悩む事なく制作ができる環境を整えることが現実的な一歩だと思い就職を考えています。 

アーティストビザにこだわらない理由

今までは自分の成長が行動意欲になり、アートを勉強する上での強いエンジンでした。 しかし卒業した友人達の活動を見て、これまでのような想いだけで卒業後にアートを続けていくのは難しいと感じました。なので今後の作家活動では、美術に対する思いを持ち続けながら作品制作をしてくつもりです。

アーティストを目指すならアーティストビザをとらなきゃいけない」漠然と思っていたこの固定概念を外して、「自分の意思と責任でどこまで作家活動を継続出来るか」を大事にすべきだなと思うようになりました。

今後の目標と課題 

まずは新たな作品を沢山作り、ポートフォリオをより充実させていこうと思います。不思議とポートフォリオの中身が充実していけばいくほど、街のアートイベントに参加する機会が増えて行きました。 

さらに今後は、もっと自由にドローイングを展開していこうと考えています。 


今回のインタビューで宮野さんの今までの道のりをお聞きし、アートサバイブログとしても素晴らしい刺激と情報をいただきました。ありがとうございました。 

続編では、宮野さんの話を基にドイツ留学の大学制度、ビザ情報などをまとめています。

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