アートの枠に収まらないアール・ブリュット。日本では独自の進化を遂げています!

アート思考

はじめに、アール・ブリュット(生の芸術)とは?

意味を知らなくても、誰でも一度くらいは「アール・ブリュット」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

アール・ブリュットという言葉は1945年(昭和20年)にフランスで生まれ、今までアートの外に置かれてきた精神障害者、囚人、子供、霊媒師などが作る作品を、これまでも存在していた医学的な見地からの研究ではなくアートとして発表したプリミティブ・アート(原始美術)とも近い概念です。

現代アートの作家の中には正規の美術教育を受けていないにも関わらずアール・ブリュットとも言えない作家たちもいますが、この記事ではまず、アートの外れに存在している作家たちがアートの世界でどの様に受け入れられたのか西洋美術の歴史と、アール・ブリュット作家をいくつかご紹介します。

そしてコロナの為オリンピック開催が危ぶまれる昨今ですが、パラリンピックの盛り上がりと共に日本におけるアール・ブリュットの注目は間違い無く高まっています。

2020年前後は特にアール・ブリュットをテーマにした沢山の展覧会があり、ここ数年でアール・ブリュット(ここでいうのは障害者のアート)専門のギャラリーや、小規模ではあるものの美術館も幾つかオープンしている今注目のジャンルです。

アール・ブリュットとは

生(き)の芸術。フランスの画家デュビュッフェにより提唱。美術教育を受けていない人などが、既成の表現法にとらわれず自由に制作した作品をいう。

デジタル大辞泉

まずは、アール・ブリュットが誕生した時代背景を知ろう

第2次世界大戦終結の年で、それ以前にも主にヨーロッパでシュルレアリズム(1920~30年)が盛り上がるなど、伝統的なアートに変わる新しい概念のアートが誕生した時代。アール・ブリュット提唱者で作品のコレクターでもあったジャン・デュビュッフェは、1640年~1950年に起こったアンフォルメル(抽象表現主義)の前衛芸術運動に参加しています。

1924年~シュルレアリズムが始まり、1937年にピカソがゲロニカを発表した。

時代を経てアール・ブリュットの概念はさらに広がる 

アール・ブリュットが誕生してから27年後の1972年、イギリスの美術批評家ロジャー・カーディナルが「アウトサイダー・アート」という本の中で、アール・ブリュットの解釈を多少広げた形でアウトサイダーアートという英語の名称を初めて使用します。

アウトサイダー・アート: outsider art)とは、西洋の正規の芸術の美術教育訓練を受けていない者の制作した作品であるが、ここではアートとして扱われているものを指す[1][中略]美術教育を受けていない独学自習であるとして[3]、概念を広げ精神障碍者以外に主流の外側で制作する人々を含めた[5]。プリミティブ・アートや、民族芸術[5]、心霊術者の作品も含まれるようになった

Wikipedia

日本のアール・ブリュットの歴史

日本で最も有名なアール・ブリュットの作家はドラマ「裸の大将」の主人公として有名になった山下清(1922年生まれ)でしょう。山下は軽度の知的障害のため福祉施設に入所しており、その施設の精神科医であった式場隆三郎が彼の作品を紹介してその名が一躍世に知られました。

式場医師は学生の頃から日本の芸術運動である白樺派や民芸運動に関わりが深く、また精神病理学的な研究から「アールブリュット」という言葉が誕生する以前からヨーロッパで研究されていた「精神病理学における障害者アート」の研究に関心を持っていました。彼は精神障害を持っていた画家ゴッホの研究者としても有名です。

アール・ブリュット/アウトサイダーアートの作家達

現代においては芸術教育の定義も曖昧になり、作家がアウトサイダーなのかそうでないのか判断することが難しくなってきています。その為現代アートの作家は含まず、比較的古い時代の作家達を抜粋してご紹介したいと思います。

たった一人で自分の理想を作り続けた孤高の作家

ーヘンリーダーガー(アメリカ・掃除夫) 

ジョゼフ=フェルディナン・シュヴァル(フランス・郵便局員)

先住民族の作家

ークリフォードポッサムチャパルトジャーリ(オーストラリア・アボリジニ)

ーケノジュアクアシェバク(カナダ・イヌイット)

障害を持った作家

ーアロイーズ・コルバス(フランス・統合失調症患者)

19世期~20世紀にかけて存在した素朴派

ーアンリ・ルソー

アール・ブリュットとアウトトサイダーアートについて関連サイト

アール・ブリュットについてもっと詳しく知りたい方は以下のURLもご参照下さい。

ーNHK 人知れず 表現し続ける者たち

ーアウトサイダー・アート著者 ロジャー・カーディナルのインタビュー

ーアートペディア アール・ブリュットの生みの親 ジャン・デュビュッフェについて

ー今後開催されるイベント アウトサイダーアートフェア(NY・パリ)

アール・ブリュット美術館(スイス・ローザンヌ)

最後に

 アメリカやヨーロッパで言われるアール・ブリュットは基本的に「はじめに、アール・ブリュット(生の芸術)とは?」でご紹介した通りの意味合いの様です。しかし日本では山下清の影響もあってか障害者のアート=アール・ブリュットと捉える事が多いのが特徴です。

以前述べた様にパラリンピックや社会の多様性などの社会情勢からも、障害者のアートは今日本で徐々に注目を集め、NHKで特集番組が放送されたり美術館で展覧会の企画が組まれています。次回記事では注目すべき現在の日本の障害者のアートについて詳しくご紹介したいと思います。