第3回 芸術分野の助成金、奨学金取得の事例と対策法〜例を用いて海外研修助成を紹介〜

海外 Articles in Japanese

文化財団の助成金ブログ第3回です。
今回は「芸術個人助成」にある、「留学や海外研修などの活動助成」を解説してしていきます。

第1回は団体助成について、第2回は個人助成について書いています。
そちらも合わせてご覧ください。

外国でアート活動がしたいと多くの人が思うのではないでしょうか。
しかし留学は大変、コネもないし英語も自信がない、、と思う人も多いのが現状です。

私は外国で10年以上美術活動をし、様々な留学や長期滞在の日本人アーティストの知り合いがいますが、活動を続けられる人と続けられない人には大きな差があります。

それはこの奨学金制度「研究助成」を取れるか取れないにあります。

ただこれが難しいのは、受かることもそうですが、まず応募条件が全てクリアし、申請書を出せるまでが大変です。そこで今回は申請に役に立つ情報を書いていこうと思います。

留学や海外研修などの活動助成について

文化振興や美術関係において、どのような理由で外国に行っても金銭面では赤字になるのがほとんどです。
赤字慣れしている芸術分野の私たちは当たり前のように覚悟していくのですが、それではやはり長期に継続はできないでしょう。

だからこそ政府や企業の助成金制度にあなたの研究や勉強したい内容を申請してみましょう。

受入書、推薦書について 

研究助成を取得するにはあらかじめ「受入書」が必要、つまり「研修先」や内容が決まっていることが条件です。

当てはまる具体的内容は「留学、アーティスト・イン・レジデンス、芸術文化機関でのインターンや特定の人物に師事」などでしょう。

これは研究を請負う方、滞在先の責任者にお願いします。しかし、相手はこういうものに慣れていないかもしれませんし、あなたのためにそんな時間はないかもしれません。

外国ですから連絡がすぐに来ないことも当たり前にあります。お願いする時はわかりやすく、できればサンプルやテンプレートを予め自分で用意し、それを参考にして作成してもらうのが良いでしょう。

直筆のサインがある原本を応募書類に添付しなければいけないことも多いので早めに始めてください。

財団事務局に「現地の教授のサインがなかなかもらえないから待ってくれないか」などの要望は基本通用しないと思ってください。全部ひっくるめての実力と運ですので決断やコンタクトは早いことをお勧めします。

留学には難しい点が一つあります。

留学が来年から決まっている人、既に留学中の人はいいのですが、留学が決まるか奨学金応募時にまだわからない人、奨学金が取れたらそのお金で留学しようと考えている人がいることです。

書類を受理してくれない財団は多いかと思いますが一応メールや電話で思いっきりお願いしたら意外と行けることもあるかもしれません。

受入先の見つけ方 

研究先を見つけるのが大変と思う人もいるでしょう。

特に外国に行ったことない人にとっては困難極まりないと思います。

方法は、まず期間が一年やそれ未満でいいのなら、大学に正規入学するのではなく、一年だけの研究生(単位もらえない代わりに授業受けたり自由)なら正規テストを受けてではないのでずっと簡単に教授の受入書をもらうことが可能です。

次に研修先が大学や公的機関でなくても職人や教授に個人的に師事させてもらう、という形で受入書を書いてもらえます。

そういう意味では受け入れてもらえる幅が増えます。しかし受け入れ先の人「助成申請応募で合格するレベルということは、受け入れ先の人がちゃんとした仕事をしている人か、肩書きがある人かなどを見極めなければいけません。そしてそこで研究を実際するのか、しなくてもいいのかなども事前に相談をするべきでしょう。

その上で助成金を取れたらお世話になる条件にしてもらえたら、上述した受入書の問題も解決できると思います。

学校に行きたい人は、学校など研究機関に連絡、もしくは先生や作家の人にsnsも駆使しながら、知り合いを辿り連絡して「受け入れ先になってもらえるか頼む」、そうなれるように関係を築くことが重要です。

それには一年、二年前から始めるのがいいと思います。

申請金額について

申請金額は財団で既に決定している場合はその額。もし自分で自由に決められる場合、多くもらいたい気持ちはわかりますが、実際にかかるだろう現実的な経費をしてください。

たくさんの応募用紙を受け取っている財団側には高く見積りすぎた申請金額はすぐに見ぬかれるでしょう。

応募資料における研究内容について

これらの資料を受け取る審査員はアート畑出身者でないことは多々あります。あまりマニアックな材料や技術のことを書かず、コンセプトや概要はみんなにわかりやすい受かるための文章を考えてください。

概要や動機は最も審査に重要な箇所になります。内容、文章力がいいことはもちろんですが相手に共感して応援してあげたいと思うようなプレゼンが織り込まれてないといけません。

文章から「この人なら信用できる、ちゃんと研究してその良いものを日本に持ち帰り日本の文化振興に努めてくれる」と思ってもらえたら応援してくれます。

まとめ 

助成金は応援であると同時に、プレッシャーにもなります。よくプロの美術家を志す自信がない、強い意思が持てない理由を”お金がないから”といいます。しかしこの助成によりある期間その言い訳は一切できないレベルに入ることができるのです。だからこそ財団に採択されて助成を受けたらより頑張るしかないのです。

助成金を力に変え頑張っていきましょう。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

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参考助成金募集リンク

Schlosspost
奨学金の募集が年一回あり
http://www.iie.org/Programs/The-Rockefeller-Foundation-Bellagio-Center-Residency-Programs

The-Rockefeller-Foundation-Bellagio-Center
アーティストインレジデンスなどのプログラムを企画
https://www.rockefellerfoundation.org/bellagio-center/

チェコ政府奨学金
私は二回、4年分助成をもらいました。
https://www.mzv.cz/tokyo/ja/x2005_07_07_3/x2006_11_21/index.html

ドイツDAAD  
ドイツ助成金の老舗
https://ryugaku.jasso.go.jp/scholarship/scholarship_foreign/germany/scholarship_de_research/

公益財団法人吉野石膏美術振興財団
若手美術家の海外研修など様々な助成金がある。
https://www.yg-artfoundation.or.jp/

文化庁在外研修制度
政府奨学金のトップ。ここに採択されれば大袈裟ではなく「日本代表の芸術家として派遣」されていることになります。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/shinshin/kenshu/index.html

ポーラ美術振興財団
おなじみPOLA化粧品が運営している。企業の文化財団で在外研修制度のトップ。
http://www.pola-art-foundation.jp/

野村財団の奨学金助成
nomurafoundation.or.jp/culture

美術工芸振興佐藤基金
工芸系の研究者への助成。こういう少し特徴的なものなど色々あるのでよく調べよう。
http://www.satoh-foundation.jp/

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