第2回 芸術分野の助成金、奨学金取得の事例と対策法〜例を用いて個人助成を紹介〜

アートワークログ

こんにちは。

文化財団の助成金には大きく分けて「芸術団体助成」「芸術個人助成」があります。
今回は個人助成について例を用いて説明します。

団体助成については第1回を参考にしてください。
最後に幾つか毎年公募している助成団体を紹介しています。

個人助成の応募で気をつけること

よくある助成金の使途は、展示などの企画、ある期間の活動資金の提供などです。

応募で、まず何より確認しないといけないのは実施期間です。
展示など企画に対する多くの募集は、定められた実施期間の中で開始されるものしか助成金を出してもらえません。

特に注意しないといけないのは自分の企画の始まりと終わりがこの期間内と期間外に跨いでいる場合です。

基本的に多くの募集では期間内に開始する企画を対象にしています。

例に出すと、2020年4月1日から2021年3月31日に始まる企画が助成対象とします。
もし企画が2021年3月25日から2021年4月10日だと対象期間内に開始しているため助成対象です。
一方で2020年3月25日から2020年4月10日の場合は一部が助成期間内に入っていますが、開始日が期間外のため助成対象となりません。

実施期間は注意深く確認しましょう。

次に確認するのは応募方法です。

これは個人、団体関係なく確実に守らないといけません。例えば、A4印刷の右上にクリップを留める、写真データ画像は一枚1メガまで、など規定は守らないといけません。

財団によって細かな応募条件が違います。日本の団体が海外で展示する場合、外国の団体が日本関係の文化を紹介する場合、その他細かく規定がありますのでそれに当てはまる財団をリストアップしてください。もし当てはまるか微妙な場合はすぐに財団にメールや電話で聞いたらいいでしょうが、この微妙なラインはどうにかクリアーさせることが第一段階です。

提出物

次に一般的に共通している提出物「企画コンセプト」「推薦書」「収支予算書」「プロフィール」「実績」について書いていきます。

企画コンセプト

申請書の中心になる部分です。初めの数行で相手をキャッチでき、幅広いジャンルの応募書類の中で分かりやすくいいものだと思われなければいけません。

コツになるのは情熱です。作品展示でも滞在制作でも背景にいるのはあなた個人の人間性であり、相手の心を動かすのは情熱、人情、意思の強さじゃないでしょうか。書きすぎず、しかし溢れる想いを伝えることが重要です。

第一回の団体助成でも触れた内容なのですが、申し込みに財団の要望やテーマを答える形で文章を書きます。

例えば助成対象が「芸術文化の”国際交流を目的”とする活動」の場合、つまる所、国際交流をしてほしいわけです。

文章の中に”現地の人とワークショップ”、”プロジェクト中に市民との交流をする”、”展示会最中に講演会をする”などを書き、実際に行ったりしたらいいでしょう。

ありがたいことにそのような交流会の参加者や聴講者人数などを記載する必要はなく、参加人数が評価に関わるわけではないので大丈夫です。

財団としての在り方以外にも、資料を受け取る審査員はどういう気持ちで受け取るかを想像して書きましょう。

例えば芸術財団などの評議委員はアート畑出身者が少なかったり、作家として活動している方が審査員をしている応募はほぼありません。アート以外のジャンルで活躍されている人が多い印象です。

つまりマニアックな材料や技術のことを書いても意味がないことも多く、コンセプトも現代アートをしすぎてても理解していただけないこともあります。

それらを踏まえ、参考として実際に40万円奨学金をいただけたときの企画コンセプトの一部を紹介します。

 会場が位置するルーマニアは共産主義の背景によりアートが行政によって制限もしくは統制されていたこともあり、そのため革命が起きる1989年以前の芸術作品や思想の内容は、今や消すに消せない複雑な産物となっています。そのような意味で、ルーマニアは過去の歴史や伝統がありながらも現代アートの歴史としては若く、現代アートが切り開かれていく国と言えます。また、ブカレストにはしっかりとした体制をもちアートのみで運営している現代アートギャラリーは未だ少なく、※※※※※はその先駆的存在であり、最も力があるギャラリーの一つです。
 
 このギャラリーはアートマーケットにおける商品としてのアートと、作品を通じて革命を起こすような文化的創造物、という二つの重要なバランスをとりながら運営されており、その真摯な姿勢にアーティストとして強く共感しております。このような芸術に対する情熱あふれるギャラリーとともに、日本・ルーマニア両文化が互いに刺激し合い、そこから生まれるインスピレーションを用いた作品および空間づくりを目指します。

念のため固有名詞は伏せさせていただきます。

推薦書

芸術関係の領域で活動していく様々な場面で、推薦書(英語でrecommendation, reference)を求められます。推薦状ではなく招聘状(invitation letter)を求められることもあります。

美術領域では権威と信用はとても大切です。特に財団は実際に企画を実施してくれるのか、お金を貰い逃げされないかを慎重に判断します。

そのような背景から第三者の保証、つまり推薦書を求められます。

推薦者の知名度がある方が受かりやすい、というわけではないのですが身元がはっきりとしていて学術的、芸術文化のジャンルにいる方がいいでしょう。

日本、外国問わずそういった方と知り合えた際は仲良くなり頻繁に連絡を取れることが理想です。

招聘状ならば展示先のギャラリストなどでもいいのですが、利害関係のない人からの推薦が必要な場合があります。その場合、手間取る人もいらっしゃると思います。

早めに推薦者の規定は確認しましょう。

収支予算書

団体助成でも挙げましたが、実際の企画前にこの予算書の収入と支出を記載しなくてはならないので、数字をなるべく的確に予想していく必要があります。

企画前に内訳関係なく申請額を支払ってくれるところはいいのですが、領収書を提出しなくてはいけない場合は安く見積もっても高く見積もっても損をすることが多いです。

詳しくはわかりやすい海外研修助成金、奨学金取得の攻略法第一回の記事をご覧ください。

そして収支の内訳はなるべく細かい項目に分けて記載がいいです。

例えば制作費の中に、分かりやすいレベルで本人が使うメインとなる材料の種類、道具など細かすぎずに、しかしアピールポイントに変えて記載できるといいでしょう。

値段振り分けは10万、20万とか大まかすぎても良くないので実際の価格をイメージして65,000円など、5000円単位くらいがいいと私は思っています。

交通費や食費など規定外のものもあるので書く応募用紙をよく読み、ミスしないようにしてください。

プロフィール

審査員ははあなたのことはもちろん、あなたが活動する内容やジャンルや企画さえも詳しくないと思ってください。端的に分かりやすく、あなたがどういう人間で何に意義を持って活動しているかをまっすぐ伝え、かつ相手に面白いなと思ってもらえる仕掛けを作っていきましょう。

実績

応募用紙の決まった枠がある場合、フォントサイズ10以上でなるべくたくさん重要なものだけを抜粋して書きましょう。

よく思われるためにより良い肩書を書きたいことはもちろんですが、何十、何百もの応募用紙をみる審査員にとって、見やすさ分かりやすさも重要です。改行、いらない単語を省く、内容を重複しない、などとよくできることはたくさんあるはずです。

まとめ

個人助成は以上になりますが、各項目をもっと掘り下げて良くしようと思ったら様々なコツや経験が必要だと思います。

今後沢山出せるためにもある程度自分の提出用のテンプレを作っておくと素早い書類制作と沢山の数をこなすことができます。

他と差を生むためにもありきたりじゃない相手に刺さる内容ができるよう試行錯誤していきましょう。

大変な作業ですが、達成感はありますし、慣れれば苦になりません。いい結果が出たらアートで真っ向から仕事ができたことになり自信になります。

こういう書類を作成することのプロセス自体が自分を見つめ返し、言語化し、アーティストとして経営していく礎となっていきます。経験が勉強になり実力を上げていく、この連鎖があなたをどんどんとプロの道に歩かせてくれるでしょう。

次回第3回は個人助成の中でも、今回言及できなかった留学や海外研修の活動助成について書いています。公募している団体も紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

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参考リンク

野村国際文化財団助成金

https://www.nomurafoundation.or.jp/culture

朝日新聞文化財団

https://www.asahizaidan.or.jp/grant/grant02.html

アーツカウンシル東京

https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/support/grants/

日本美術家連盟

http://www.jaa-iaa.or.jp/index.html