卒業シーズンとなりました。今回は美術系学校を卒業する前にやっておいた方がいいことをご紹介します。毎年沢山の学生が美術系学校から巣立っていきますが、アート業界で活躍できる人はごく僅かです。もちろん美術系学校を卒業したからといって、必ずしもアーティストにならなければいけないわけではありません。しかし、卒業後も本気で制作を生業にしていくと覚悟を決めたからにはやっておいた方がいいことはたくさんあります。
目次
1:自分のウェブサイトを作る
自分のポートフォリオ、メディアという意味でもウェブサイトを持つことは最も基本でしょう。様々なSNSや、ポートフォリオが持てるプラットホームがありますがやはり自分独自のサイトをお勧めします。ウェブサイトを持っているというだけでアーティストとして生きていく本気度も伝わってきます。費用にフリーで作れるサイトは沢山ありますし、ランニングコストもドメインの月額500~1500円程度でできるので作れます。ウェブサイトを作るのは結構時間がかかります。操作に慣れていない人なら慣れるまでに試行錯誤が必要ですし、自分の理想のデザインを求めるとさらに時間がかかります。
在学中は自分の作品の傾向が定まっていなかったり、自分のポートフォリオに載せたいと思えるような作品数も少ないと思いますが、まずは時間がある学生のうちに基盤を作ることが大切です。まだあなたのページを見に来る人も少ないうちから練習し、どんどんブラッシュアップしてくことで将来一人前のウェブサイトが完成すればいいのです。
アーティスト向けのウェブサイトの作り方は以前ブログにも掲載しているおでそちらも参考にしてみてください。
2:アート活動用のSNSアカウントを作る
今やSNSはアーティストにとっても必要不可欠で、アカウントを持ってない人はすぐに始めるべきだと思います。学生のうちから使っている人も多いと思いますが、ここでのSNSとはプライベートや趣味よりもアーティストの活動を全面的に押し出したアカウントのことです。アカウントの名前はあだ名ではなく本名で、できるだけあなたの情報を入れて自分のことを知ってもらう場所として活用しましょう。日本と違い欧米は基本フルネームで本人の笑顔の写真が貼られているほどのオープンな環境です。SNSにおける匿名やニックネームの時代はもう終わっています。
投稿にも積極的に作品の写真や制作過程、展示の様子を載せましょう。SNSではウェブサイトとは違ってあなたの人間味を出しやすいです。よって作品とともにあなたの人間性も好きになってもらうような場所にできたら理想ですね。SNSについては苦手意識がある人も多いでしょうが、不特定多数の人にあなたのアートを見てもらう入り口を解放する、SNSから自分のウェブサイトへアクセスを流入させるためにも重要です。
アーティストにとってのSNS利用についても過去にブログでも紹介しているので、よければ参考にしてみてください。
3:作品の値段、展示記録などのリストを作る。
学生は課題作品などが多く、作家的な作品にはならないものが多いと思います。しかし今まで自分が作った作品を把握し、傾向を知るためにも作品をまとめることは大切です。リストとしてまとまっていると後で見返すのが楽ですし、作品が多くなってきたときに所蔵場所や過去の展示場所がリスト化されていると何かと便利です。NumbersやExcelを使うのがおすすめです。
これもウェブサイトと同じく、作品数が少ないうちはやる意味がないと感じるかもしれませんが、これから作品リストを作り続ける上で基盤を作るには時間がある学生時代が適していると思います。将来アーティストとして活躍できるようになったときに「過去の自分、作品リスト作り始めてくれてありがとう」ときっと思えるので、将来の自分への先行投資と思って頑張りましょう。
これを機に作品に値段をつけるという行為が初めてという人も多いのではないでしょうか。自分の作品や芸術に対して向き合う良い機会になると思います。
作品リストの作り方についても過去のブログで紹介しているので、よかったら参考にしてみてください。
4:自身の今の系統を文章化する。
自分の作品や制作スタイルを客観的にわかりやすくしましょう。見てくれた人が覚えやすく、ギャラリーやアート関係者が自分や作品のことを使いやすいように自分の系統をカテゴライズしたり、作家や自身の哲学や考えを記述する「コンセプト」を作ると同時に、もっと簡単でわかりやすい「キャッチコピー」や短いセンテンスで個性が伝わるワードも散りばめておきましょう。卒業制作くらいのレベルからを“作品”として、徐々に自分のスタイルや個性を確立していきましょう。
自分の中にある漠然とした制作に対するイメージや、作品コンセプトを端的に文章化することは自分自身の今後の方向性を見つけることにも役に立つと思います。まとまった文章にすることで相手に自分の作品の良さを伝えやすくなり、それが興味を持ってもらうきっかけにもなります。
5:20代で一花咲かせられるよう急いでアートのマーケットの研究などをする。
学校を卒業してからアーティストとして社会に放り出され、何をしたらいいのかわからずに時間だけがすぎるという事態だけはなんとしてでも避けたいところです。在学中からギャラリーに営業をかけたり、コンペやレジデンスの応募リストを作ったりして将来の自分が何をやるべきなのかを明確にしておくと安心できると思います。その際に先輩アーティストの略歴を参考にするとどんなコンペやレジデンスに参加するべきなのかがわかるります。自分と同じ学校出身のアーティストや同じような作風のアーティストなど共通点を見つけてどんどんリサーチしていきましょう。
6:学生が終わっても毎日アートと気持ちも手も離れられないような環境を作る
美術系学校に通って制作を行なっていた人は、卒業してからいかに学生時代の環境が制作する上で恵まれていたかと改めて感じると思います。そのくらい学校卒業後アーティストとして活動することは大変で、アトリエや道具など様々な問題があります。今までのような大胆な作品が作れなくなるとか、制作の環境がないとどうしてもクリエイティブな気持ちになれないとか、そう言ってアートから離れていくアーティストもたくさんいます。もしあなたが本気でアーティストとして活動したいのでれば、美術系学校を卒業する前から卒業後も毎日アートに触れることができる環境を事前に準備しておくことは大切です。
環境といってもアトリエだけでなく、他アーティストやギャラリーとの関係や情報網を保っておくことも自分の制作環境を整えることの一つの要素です。
7:負けない気持ち
アートをやめる、ものづくりを止めることは簡単です。身体も気持ちも環境も、脆く儚いものです。しかし一度止まると確実に再スタートすることは困難です。今後、いつでも制作をやめられる理由は沢山これから出てくると思いますが、その中で学校を卒業するタイミングは大きなターニングポイントであり、やめてしまう丁度いいチャンスになってしまいます。皆さんもお金、将来、才能に不安があるかもしれません。しかし学校にいたときの気持ちをもう一度思い出してください。かつて夢見た何かにチャレンジする舞台はこれからです。本気で続けていけば必ず成果は出てきます。そのためには勝たなくてもいい、負けない気持ちを大切に。
以上が美術系学校卒業までにやっておいた方がいいこと7つを書きました。人によってやるべきことは変わってくると思いますが、卒業後の不安を解消するためにもできる限りのことをしましょう。体力とモチベーションがあるうちにスタートダッシュできるかが今後の制作にも大きく関わると思います。