アート・バーゼル2023を紹介 -Art Basel-

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 世界最大級の国際アートフェアといえば、1970年より開催されているArt Basel(アートバーゼル)。6月の本家スイスで行われる“バーゼルのBasel”、12月にはアメリカのMiami Beach、3月には香港でも開催されます。さらには、2022年10月にはParis+ par Art Baselも新たに開催されました。様々な国に点在するバーゼルアートフェアは、確実に世界トップのアートフェア、アートビジネスとしても不動の地位を確立しています。昨年2022年はアートマーケット全体が前年度比3%増の成長となり、2019年のパンデミック前の市場規模を回復したといいます。(引用:The Art Market 2023

さて、世界各地で新しいアートフェアや芸術祭が次々と誕生し、どれを見れば良いのか迷ってしまう程です。今回、アートライターである佐藤久美が、欧州のアートフェア、ビエンナーレや美術館の3回の記事にて紹介をさせてもらいますので皆さんも参考にしてみてください。本記事は、総本山であるアート・バーゼル(2023年6月の様子を、スイス最大の見本市会場 Messe Basel(メッセ バーゼル)からご紹介します。

【Unlimited アンリミテッド会場】Hall1

 天井の高い展示場に、映像やインスタレーションのための小部屋が15~20程施工された贅沢な作りで、出展された大型作品やインスタレーションが鑑賞できます。

アメリカのミニマル・アートを代表するカール・アンドレ(Carl Andre)の床に展示された鉄板の作品の先には、世界のメガギャラリーの一つといわれる「David Zwirner(デイヴィッド・ツヴィルナー)」から出展しているドイツの抽象画家ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)の新作が見られます。美術館でも見られない贅沢な組み合わせが楽しめることも、アートバーゼルの大きな魅力です。会場で作品解説を説明してくれたスタッフはアート専攻の学生でした。会期半年前の公募で選抜されるそうで、アートマーケットの中での学びの場として機能しているようでした。

アートは社会への問いかけや、作家の問題意識を表現する場でもあります。現代美術界で重要な賞の一つである「ターナー賞」を2017年に受賞した、イギリス人アーティスト、キュレーターであるLubaina Himid(ルバイナ・ヒミッド、1954-)の作品 A Fashionable Marriage(ファッショナブル・マリッジ, 1986) は、イギリスロココ時代の画家 William Hogarth(ウィリアム・ホガース、1697ー1764)の風刺画を引用し、1980年代の美術界の人種差別と性差別を表現していました。椅子、食器棚、お皿、ゴムやプラスチックを使って彩られた一見カラフルで楽しいインスタレーションで、社会課題と接続できるのがアートの力だと感じます。

【Galleries ギャラリー会場】Hall2

 Hall2の1Fと2Fで約300のギャラリーが出店し、何時間歩いも回りきれないほどです。前述の「David Zwirner(デイヴィッド・ツヴィルナー)」のほか、 「Gagosian (ガゴシアン)」,「Pace(ペース)」, 「Hauser & Wirth(ハウザー&ワース)」など、絶対におさえたい世界のメガギャラリー達は、美術館で繰り返し見た著名作家の作品を取り扱っていました。

全体の印象としては、グラフィティ・アートをモチーフとしたJean-Michel Basquiat(ジャン=ミシェル・バスキア、1960ー1988-)、ポップアートのRoy Lichtenstein(ロイ・リキテンシュタイン、1923−1997)、抽象画の Mark Rothko(マーク・ロスコ、1903−1970)を多数見かけ、84億円で売れたというマーク・ロスコ、同じく39億円と言われる Willem de Kooning(ウィレム・デ・クーニン、1904ー1997)も展示されていました。いづれも20世紀半ばから後半にアメリカで脚光を浴びたアーティストで、現在のコレクターやギャラリーに人気を博しているようです。

その他多く見かけたのは、フランスの彫刻家 Jean-Marie Appriou(ジャン=マリー・アピユ、1986- )の人物像と Jhon chamberlain(ジョン・チェンバレン、1927ー2011)の彫塑で複数ギャラリーで展示されていました。ジャン=マリー・アピユはHall1のアンリミテッド会場でも、村上隆も所属しているギャラリー「PERROTIN(ペロタン)」より帆船に人物2人が乗った巨大なオブジェが出展されていました。これからさらに多くのギャラリーから紹介されるでしょう。

 ニューヨーク、ロンドンのギャラリーが多数参加し、欧州大陸ではベルリン、イタリア各地、地元スイスのギャラリーが目につきました。チェコなど東欧のギャラリーは見つけられなかったものの、ロンドンで Egon Schiele(エゴン・シーレ、1880ー1918)と Gustav Klimt(グスタフ・クリムト、1862−1918)を主に扱うギャラリー「Richard Nagi(リチャード・ナギ)」で 19世紀末ウィーン黄金時代のドローイングを鑑賞しました。

印象派から現代アートまで幅広く扱うNYのギャラリー「Aquavella(アクアベッラ)」(https://www.acquavellagalleries.com/) から出展のTom Sachs(トム・サックス, 1996ー)は台座も作品の一部で、Constantin Brâncuşi(コンスタンティン・ブランクーシ, 1876−1957)の文脈がみられます。右奥に小さく見えるのはリキテンシュタイン、右手の手前はPierre Bonnard(ピエール・ボナール、1867−1947)で、コンパクトなギャラリースペースなのに美術館では見られない組み合わせの展示が見られるのも大きな楽しみの一つです。

日本の作家作品は草間弥生(1929ー)が多数、また杉本博司(1948ー)の写真やシルクスクリーン、村上隆(1962ー)のピクセルのお花、奈良美智(1959ー)、塩田千春(1972ー)が見られました。日本を拠点に世界中で活動しているLee U Fan(リ・ウーファン、李禹煥1936ー)も複数ギャラリーから出展され、Gallery Hyundai(ギャラリー・ヒュンダイ)」では新作としてたくさんの陶器作品を出展していました。

表参道にもギャラリーを持つニューヨークの「Fergus McCaffrey(ファーガス・マカフリー)」から白髪一雄(1924−2008)とうさぎの焼き物のイケムラレイコ(1951ー)が出展され、2Fの「タカ イシイ」から内藤礼(1961ー)が出展されていました。加賀温(かがあつし、1978ー)のうさぎの大型絵画も会場で見られ、日本の兎年とは関係ないでしょうが、日本の作家の作品として偶然「うさぎ」モチーフが目につきました。

まとめ

アートバーゼル2023ではルイ・ヴィトンやBMWといったラグジュアリーブランドがパートナーとしてブースを構える同時に、キッズイベントが開催されたり来場者も家族連れや子どもが多く見られたり、参加者もアートフェアの楽しみ方も多様化していると感じました。10月のParis+ par Art Basel、アートバーゼル提携の11月アートウィーク東京と更なる発展と新しいトレンドが楽しみです。

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