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世界最古の国際美術展として知られているヴェネツィアビエンナーレに始まり、これまでヨーロッパでは文化事業が盛んに行われてきました。今回は、そのなかでも歴史のある芸術文化の祭典「欧州文化首都」を紹介します。毎年、異なる都市で多種多様なプログラムが企画されるこのイベント。時代と地域に応答したアートプロジェクトや新進気鋭のアーティスト、各分野の有識者が集まるフォーラムまで、これからの芸術文化産業の動向にたいする知見を深めることができるでしょう。また、日本ではまだ広く知られていないこの取り組みですが、日本人アーティストも招聘されています。近い将来、観客として芸術祭を体験しに行ったり、キュレーターやアーティストとして挑戦することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
欧州文化首都とは?
「欧州文化首都(European Capitals of Culture)」は欧州連合によって1985年から開催されている、歴史ある文化事業です。毎年ヨーロッパの2~3都市が選ばれるこのイベントは、これまで60以上の都市で行われてきました。開催の6年ほど前から誘致活動、および開催都市の選定が行われます。それぞれの土地の歴史や文化を反映したプログラムが一年を通して行われるため、各都市の歴史に残る一大イベントとなっています。
マリヤ・ガブリエル氏(欧州委員会イノベーション・文化・教育・青少年担当)は、欧州文化首都の取り組みについて「EU(欧州連合)の築き上げてきた、多様性・結束感・敬意・寛容性・オープンさという価値観の促進に重きを置くもの(*1)」とコメントしています。
![Novi Sad 2022, Open Call: Fortress of Peace](https://www.ecocnews.com/media/k2/items/cache/58b053c805beeea9e04dde1724076741_XL.jpg)
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以下は、欧州文化首都が掲げる4つの構想です。
⑴ ヨーロッパにある肥沃で多様な文化にスポットライトを当てる
⑵ ヨーロッパの人々が共有する文化的特徴を賛美する
⑶ 公共の文化領域に対するヨーロッパ市民の共属意識を向上する
⑷ 文化による都市開発への貢献を促進する
欧州委員会 (*2)より
これらからわかるように、それぞれの地域に存在している文化的多様性を表象していくとともに、ヨーロッパのコミュニティという枠組みをアップデートしていく場が目指されています。毎年異なる都市を対象として、ヨーロッパ内の文化を見つめ直す機会となっています。
都市へのアプローチ
欧州文化首都では、グローバルとローカル 双方のコンテクストから、都市を包括的に発展させることが試みられています。ハード面にとどまらずソフト面も変革していくことが、芸術文化産業によるアプローチの特徴と言えるでしょう。
欧州委員会は、欧州文化首都の開催によって地域コミュニティに以下のような効果が生まれていることを指摘しています。
⑴ 都市を刷新する
⑵ 都市の国際的認知度を上げる
⑶ 住民の目に映る、彼らの都市に対するイメージをより良いものにする
⑷ 都市の文化に新たな息吹をもたらす
⑸ 観光事業を発展させる
欧州委員会 (*2)より
![Kaunas 2022: The Crown Jewel of Europe's Contemporary Culture – Lithuanian Culture Institute](https://english.lithuanianculture.lt/wp-content/uploads/photo-gallery/imports/09.06Fluxus-52.jpg?bwg=1619169886)
Image source: Lithuanian Cultural Institute
2022年~2025年の開催都市でも個性あふれるプログラムが企画されています。それぞれのテーマやその背景、何千にもおよぶ魅力的なイベントの数々は必見です。お気に入りの開催都市を見つければ、その地域やヨーロッパについて新たな視座が得られるはずです。(以下、画像をクリックするとWebサイトがチェックできます。)
開催都市リスト(2022〜2025)
Esch 2022 (ルクセンブルク)
![](https://artsurviveblog.com/wp-content/uploads/2022/10/image-6-730x261.png)
Kaunas 2022 (リトアニア)
![](https://artsurviveblog.com/wp-content/uploads/2022/10/image-1.png)
Novi Sad 2022 (セルビア)
![Hangvető](https://hangveto.hu/wp-content/uploads/2022/01/VEB2023-logo_en_website_lablec_fekete_130x280px-1024x467.png)
Timisoara 2023 (ルーマニア)
![File:Timisoara 2021-2023 European Capital of Culture.svg - Wikimedia Commons](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a5/Timisoara_2021-2023_European_Capital_of_Culture.svg/2560px-Timisoara_2021-2023_European_Capital_of_Culture.svg.png)
Elefsina 2023 (ギリシャ)
![](https://artsurviveblog.com/wp-content/uploads/2022/10/image-4-730x511.png)
Tartu 2024 (エストニア)
![Tartu 2024 international open call | UBC.net](https://www.ubc.net/sites/default/files/styles/main_image_smaller_768x400/public/t24_eng_horizontal_black.png?itok=igx0pMgc)
Bad Ischl — Salzkammergut 2024 (オーストリア)
![Kulturhauptstadt Bad Ischl - Salzkammergut 2024](https://media.tourdata.at/display/pic800x/59c9889914628ae2de1975b7d39749c3.jpg)
Bodø 2024 (ノルウェー)
![Bodø2024 — Peacepainting.org](https://images.squarespace-cdn.com/content/v1/5bdab690a9e028ddcd3a400c/d532acb2-875b-441f-9a13-743113c4dce4/Bodo2024_logo_rod_stor.png)
Nova Gorica 2025(スロベニア)
![GECT GO / EZTS GO](https://euro-go.eu/media/images/GO_2025_color_YLy2ygC.original.png)
Chemnitz 2025 (ドイツ)
![Kulturhauptstadt Europas 2025 - Chemnitz](https://chemnitz2025.de/wp-content/uploads/2021/01/2025_quer.png)
まとめ
気になる開催都市は見つかったでしょうか。それぞれの都市をみていくと、日本から見えている一枚岩なヨーロッパとは異なる側面を垣間見れるはずです。また各地域がそれぞれの視点から見据えるグローバル化の流れと地域社会の未来は、現代に生きるすべての人が避けては通れない話題でしょう。一つの開催都市に着目して深掘りすれば、今後どのように文化事業が都市やそこに住む人々により深く関わっていけるのかを考える手立てとなるはずです。欧州文化首都は毎年異なる国で行われます。ヨーロッパ周辺を訪れる際には、開催都市に足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
*1: “Three New European Capitals of Culture for 2022,” European Commission. https://culture.ec.europa.eu/news/2022-european-capitals-culture.
*2: “European Capitals of Culture,” European Commission. https://culture.ec.europa.eu/policies/culture-in-cities-and-regions/european-capitals-of-culture.