【Art is Business】アーティストをサポートするアートメンター、その役割とは?

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昨今、日本ではアート思考が盛り上がりを見せ、Business as Artという言葉も生み出されるなど、
ビジネスにアート的な思考を取り入れようとする動きが加速しており、
企業のビジョン・ミッションの策定や新規事業の開発といった場面で、その思考が役に立っていることも多い。

アート思考に関する記事はこちら

それに対して、アーティストはどうか。

アーティストは、ビジネス的な考え方を取り入れて、自分のアート活動をマネジメントできているだろうか。もちろん、ビジネス的な思考を持ったアーティストもいるにはいるが、その数は少ないだろう。

いまや、日本を代表する現代アーティストとなった村上隆は、その著書「芸術起業論」の中で

いかに自分の作品をブランド化させるか、そして、マーケットを分析することがいかに大事かを語っているが、そういったことは、より多くのアーティストに必要なことだ。

今回、アートサバイブログでは、長年、現代アートの世界で経験を積み、そこで培った経験を生かし、ビジュアルアーティストのためのオンラインビジネススクール「The Working Artist」を設立し、これまで、80か国以上のアーティストの展示や販売といった活動を支援してきたアートメンターのクリスタ・クルーティエ (Crista Cloutier) に話を伺った。アーティストの方でどのように今後、自分を売り込んでいくのか分からないと悩んでいる方はぜひ、読んで欲しい。

アーティストをサポートする、The  Working Artist とは?

 The  Working Artistは、アメリカ人のクリスタ・クルーティエが設立したビジュアルアーティストのためのオンラインビジネススクールだ。設立者のクリスタ・クルーティエはこれまで80か国以上のアーティストの展示や販売といった活動を支援している。LinkedInからは「現代アートの世界のインフルエンサー」として表彰されている。このオンラインスクールの特徴は、彼女自身が、このオンラインスクールを始める前に、アートスタジオでアーティストたちとコラボレーションする中で知った「アーティストがどのように情報を学び、吸収するのか」といったことを念頭に置いている。そのような「Artist Brains」に加えて、彼女自身の現代アートの世界で長年働いてきた経験を基にして、アーティストの活動に必要なビジネスのノウハウを、アーティストに伝えている。


コースは主に3つに分かれており、Early Career Artists・ Mid-Career Artists・Established Artistsがある。Early Career Artistsは駆け出しのアーティストを対象としたコースで、Mid-Career Artistsはアーティストとしての実績をより積んでいきたいアーティストを対象としたコースで、Established Artistsは、すでに実績があり、より自分のアーティストとしてのブランディングを確固たるものにしていきたいアーティストを対象としたコースだ。いずれのコースも、動画によるレクチャーとインタラクティブなワークブックで構成されている。また、月に1回、コーチングコールというコースの受講者(ワーキングアーティスト)と卒業生のためのクリスタのオンラインコーチングがあり、そこで動画やワークブックなどのコースに関してはもちろん、自分のアーティスト活動に関してもフィードバックを貰うことができる。


その他、The Working Artistはアーティストがアート活動を継続させていくための、アートを売るための方法などの情報をブログとして発信している。この記事はクリスタ自身の経験や他のアーティストとの交流を基にしたものとなっており、興味深い有益情報が多く、アーティストにとっては魅力的な内容となっている。現在、アートサバイブログでは、The Working Artistとメディア提携をしており、The Working Artistに掲載してある記事を翻訳し、転載しているのでそちらもぜひチェックしてみて欲しい。

アートをオンラインサイトで売る秘訣

また、今後は追加のプログラムとしてマスタークラスにNFTや仮想通貨に関する内容を加える予定でいるそうだ。

The  Working Artistはオンラインでプログラムを受けることができる

設立者クリスタ・クルーティエのストーリー

そんなオンラインプログラムやブログを通じてアーティストの活動をサポートしているThe Working Artistだが、その設立の背景には、クリスタのキャリアのストーリーがある。アメリカの大学で写真を専攻したクリスタは、卒業後、現代美術の世界で多くの世界のトップキュレーター、ギャラリスト、アーティストと働くことで、専門的な経験を積んできた。そして、その後に、彼女は再びアーティストとしての自分自身を見つめ直すために、アメリカのギャラリーを離れ、ヨーロッパに移った。このことに関して彼女は、「長年、アートビジネスに携わり、多くのギャラリーやオークションハウス、キュレーターがどのようにアートを売るのかといったアートビジネスを学んできた経験は知識となり、価値あるものとなりました。しかし、私は自分がアーティストであるということを忘れてしまっていることに気づいたのです。だから、誰も自分のことを知らない場所に行こうと思いました。」と語った。ヨーロッパに移った彼女は、自分自身に合った仕事を探し、イギリスの地で、ある人からの提案で、どのようにアートを売るかなど今まで自分自身が蓄えてきた知識をアーティストに教える仕事を提案された。そこから、10年ほど前にアートグループや大学で教え始め、 7年前にプログラムをオンライン化したのだ。

また、インタビューをする中で彼女が語ったことは、アートスクールでは、様々な技術については教えてくれるものの、どのようにアーティストがお金を稼ぐかということに関しては教えてくれないため、お金の稼ぎ方に関してアーティストに教える必要があると感じていたとも彼女は語った。

The Working Artist設立者のクリスタ・クルーティエ

アーティストに関して

現代アート業界で経験を積みアーティストをサポートしてきた彼女だが、彼女にとってアーティストとはどういった存在なのだろうか。彼女はアーティストの定義として、アーティストの作品が他者に見られていること、手を動かして制作していること、制作した作品にアーティストにとっての意味が込められていること、そして自身の作品を自分で改善していくことをあげた。人によって定義が異なるアーティストの定義だが、筆者個人としては、手を動かすということと、制作した作品にアーティストにとっての意味が込められていることは自身も作品を制作したことある経験から共感できる点だった。コロナの話になると、彼女はすべてのアートはどんなアートでも政治的なアートだと信じており、アーティストは文化に責任を持っているので、全てのアーティストはコロナという事象に対して責任を持ち、作品を制作する必要があると語った。このことは、彼女がキャリアを通して長い間、関わってきた現代アートのひとつの定義として、現在、起こっている事象に対して、応答するカタチで作品を作るということが関係していると感じた。

また、アーティストが豊かであるとはどういうことか。というこちらの質問に対しては、アーティストが豊かであるということは、資本主義的に豊かであるということ、つまり、お金を持っているということではなく、アーティストを豊かにするのは、人間関係、作品の制作に専念すること、そしてアイデアだとも語った。アートサバイブログも、どのようにアーティストがお金を稼ぎ、サバイブしていくかということに焦点を当てた記事をこれまで書いてきたが、これは言うまでもなく、現代では、生活していくために、少なくとも資本主義の世界の中で生きていく上では、お金というものが必要であるからに他ならない。

しかしながら、アーティストにとっては生活していくためのお金を稼ぎつつも、自らが試してみたいアイデアを試したり、作品の制作に専念し、自分が表現したい世界に没入していくことが何よりも大切なことかもしれないと考える機会を貰うことがこの質問を通してできた。

ここまで、アーティストをサポートするThe Working Artistと、その設立者であるクリスタ・クルーティエのストーリーと彼女のアーティストに対する考えをお伝えしてきた。

この記事のタイトルにあるように、芸術産業におけるアートは無論ビジネスであり、どのように自分の作品を売っていくのかを考えることは、全てのアーティストに必要なことだ。ただし、それは何もアーティストが起業家のように、自分の作品を通じて、富を築くということを意味するのではなく、自分が試してみたいアイデアを試したり、作品の制作に専念し、自分が表現したい世界に没入していくために、社会の一員として生活していくためにお金を稼ぎということを意味する。

そのためのサポートをしてくれるのが、The Working Artistであり、アートメンターのクリスタ・クルーティエなのだ。

この記事を読んだアーティストの方で、アーティストとしての自分のブランディングや作品の売り方に悩んでいる方はぜひ、The Working Artistでクリスタのレクチャーを受けてみてはどうだろうか。

The Working Artistのサイトはこちら

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