「滞在制作(別名:アーティスト・イン・レジデンス)」
アートに関わりある方には1度は聞いたことがあるでしょう。この記事を読み方には、参加に検討しているアーティストは多いと思います。
今まで、数カ所のレジデンス参加した経験から、アーティスト・イン・レジデンスに関する
・概要
・魅力
・応募する際に気をつけてる点
・個人的な今後の展望
などまとめてみました。ぜひ最後までお読みいただき、参考にしていただければ幸いです。
アーティスト・イン・レジデンスとは

一言で言えばあるアート関係の場所に一定期間滞在して作品を創るプログラムです。
Artist in Residence を訳してAIRと表記される事も多々あります。レジと呼ぶ事もよくあります。
アーティスト・イン・レジデンスは海外に滞在し制作するという経験以外にもキャリアとして活用することができます。
多くの人がアーティスト・イン・レジデンスの活動歴を自分のCVに記載しアピールします。
世界と日本のレジの違い
筆者が住むヨーロッパは小規模のものがほとんどですが、数は多いです。
個人の資産家が趣味で運営しているもの、市が関わっている文化事業、アーティストが自主開催しているものがほとんどです。
考えられる理由としては、昔からアートと文化が根付いてること、土地が余っているから宿泊場所や制作場所が確保しやすい、からだと思います。
しかし渡航費を支援してくれるところは少なく、日本からの飛行機代を全額出してもらえるのはかなり大きな規模のレジ、もしくは市やEUの予算などが一過性で貰えた時のみでしょう。
そのため、ヨーロッパへの一度の渡航で2つ3つのAIRに参加する人も多いです。
一方日本のAIRはシステムやケアがしっかりしている印象です。例えば渡航費を出してくれたり、滞在中に地元の人との交流会やワークショップがプランに組み込まれていることが多いです。
なぜ参加するのか

経験値、人生としての経験を得るためです。
アーティスト・イン・レジデンスは、決められた期間の中で、リサーチ→制作→発表をやり遂げないといけません。
アイデアは期間前からこさえて現地に行くと思いますが、期間内にそれを消化し、その過程で肥したり変更させたりします。
他者から決められた期間内でインスピレーションから創作、完成、プレゼンまでの経路を考えてやるいい機会だと思います。
そして、小規模なレジなどで、アートコレクターや展示など、動けば人脈や別の展示の機会などに広がっていきます。
一方で大規模なレジだと、キャリアアップや、次のレジにいく足掛かりになったりします。
自分の知らない土地ででたアイデア、材料、作品はアートと自分の可能性を広げてくれます。
今は少なくなってきたかもしれませんが2000-2010年代はレジデンスを繋いで世界中を旅行xアートの感じで、武者修行をする放浪侍のような人もいました。(私はそういった人たちをレジ侍と呼んでます。)
アート以外でも得られるものは多くあります。
友達、それ以上の関係になれる人がたくさんできますし、全然違う国籍の人とたくさん話し、ネットには書いていない風習やクセなども知ることができます。(こういった積み重ねがコンセプトの説得力や言葉選びに表れます。)
アーティスト・イン・レジデンスで招聘された芸術家という信用が、ローカルの面白い人と繋げていただけたり、ただ親交を深めるだけではなく、作品売買など一歩踏み込んだ話をする事もできるかもしれません。
応募で気をつけること

アーティスト・イン・レジデンスは調べるとかなりの数が見つかります。
全部に応募することは時間の観点からお勧めできません。
私なりの判断基準を紹介いたします。
1.自分が当てはまるジャンルやオファーの応募か、そして行きたいと思えるか
アーティスト・イン・レジデンスにも色々あります。
都会の中心に滞在し、デジタルアートがテーマのもの、田舎に滞在し、自然がテーマのもの、木彫など材料が限定されているものなど、自分がやっているジャンルと当てはまるか、そしてその場所やレジのコンセプト、経験やキャリアとして魅力があるかなど吟味します。
2.審査に応募費用が必要か無料か
コンペの応募費用がかかるケースコンペは半分くらい、アーティスト・イン・レジデンスは1割くらいの確率であります。
アーティスト・イン・レジデンスの場合は日本円で2000円くらいが多いと思います。
3.レジデンス期間が自分が行ける期間と当てはまるか。
レジは3週間から1年の期間があり、1-2ヶ月滞在が多いと思います。
1年間のうち期間が決められているものや、1-3月、3-6月、10-12月などの中から希望する期間を選べるものもあります
期間が決められているものは、定期的な仕事やバイトがある人アーティストにはかなり痛い条件となります。
また大学生の方は、夏休みに当たる期間を選ぶかと思いますが、その期間は学生の倍率が高くなってしまうため、大変難易度が高くなります。
一方で、クリスマス~年末にヨーロッパやアメリカに滞在するのは倍率低い傾向があるためお勧めです。冬滞在なら日本の電気代もウキますね。
4.応募者の国籍、年齢、ジャンルなどの制限が当てはまるか
バルト三国の人だけ、ドナウ川沿いの国(ハンガリー、オーストリア、スロバキア、ルーマニアなど)の人、大阪で作家活動拠点がある人、などの条件があったりします。
5.応募締め切りは大丈夫か
アーティスト・イン・レジデンスの締め切りはコンペなどに比べて非常に早いです。
大体、滞在1年前ごろに締め切りがきます。
英語で記載、場合によっては海外に郵送しないといけないことがあります。
締め切りはよく確認しましょう。
6.渡航費、滞在費の援助額
滞在制作プログラムだからといって、滞在場所が無料で貸してもらえるとは限りません。
家賃を作家に負担させるプログラムはそこそこの数が存在しています。
審査が通った後に気づいたら面倒なことになります。
7.ビザが必要か
EU圏内だと3ヶ月の滞在まで日本人はできます。しかし国によって、例えばロシアだとどんなに短くても大使館までビザの申請に行かなくてはいけません。
また、EU圏においても180日間のうち3ヶ月のみ滞在可能であって、3ヶ月滞在後、一度日本に帰国したとしても、しばらくはEU圏の国に再入国できません。
そこも念頭に置き応募しましょう。
8.その他の条件
作品を滞在後に展示するかしないか、作品を寄贈するかしないか、ワークショップやプレゼン、講演などがあるかないかの条件も確認しましょう。
アーティスト・イン・レジデンスに参加する意図は様々だと思います。
海外で自分のテーマを深めたい、新たなテーマを見つけるインスピレーションを得たい、海外での展示というキャリアを得たい。
特にお金を払う必要のあるプログラムに参加するならば、闇雲の参加していると費用ばかりが嵩んでしまいます。
自分のニーズにあったものに応募しましょう。
今後の展望

2020年8月現在、コロナウイルスの影響で応募開始を延期や中止したりしているところがあります。
しかし、意外にも来年以降の募集を再開しているところも増えています。
ただ、出発直前の中止や延期も考えられます。ワーキングホリデービザは各国1回ずつまでしか取れません。申請後のキャンセルはできないため、ビザを無駄にするのは大変もったいないです。
しばらくはビザなしで行けるプログラムのみ応募することを強くお勧めします。
まとめ
自分も20個以上の大小様々なレジをしました。人生経験、アート武者修行、未知なものを見たい、色々な理由はありましたがとにかくやってよかった。レジを足がかりに世界での活躍の場を広げてください。
最後にアーティスト・イン・レジデンスを探せるサイトを貼っておきます。
ぜひ探してみてください。
日本のAIRまとめ
https://air-j.info/program/yui-port_2021_winter/
海外のAIRまとめ
https://www.transartists.org/map
それではまた別の記事でお会いしましょう。