【前編:ミクロ】地球は野生化した文明人の楽園になる?これからの世界の在り方とは。

Articles in Japanese

14世紀のペスト大流行、20世紀のスペイン風邪、そして現在、現在、世界を覆っているコロナウイルス。

人類はこれまでも、パンデミックを経験し、その都度、知恵を絞り、生き抜いて生きた。

ダボス会議のグレート・リセットという言葉にあるように、再び、新しく社会を構想する必要があるのは明らかだ。

しかしながら、その新しい社会の輪郭というものを捉えることは、難しい。

そこで、今回、ArtSurvieBlogでは、これまでのインタビューやアーティスト集団が運営するという特異な点から、大胆にもこれからの社会の輪郭を描いていこうと思う。

巷で耳にすることがある言葉も、この記事を読むことで、ある一定の方向性の基にあることを感じていただくことができたら望外の喜びだ。

素朴という名のナラティブ

ビジョン・ミッションという言葉を聞いて、あなたは何を連想するだろうか。

おそらく、スタートアップやベンチャー企業が、投資家へ株主などのステークホルダーに対して、あるいは、社内に向けて発信するキャッチコピーだと思う。

その認識は正しい。

現に多くのスタートアップやベンチャー企業は、ビジョンとミッションを軸として、事業を展開させ、組織の開発などの企業文化の醸成に取り組んでおり、企業にとっての思想・哲学を明文化したのがこの言葉となっている。

では、改めてビジョン・ミッションとは何か。諸説あるが、ビジョンとは、企業のビジネスが目指す世界観であり、目指す場所であり、どんな世界になって欲しいのかということミッションとは、その世界観を達成するために、企業がすることであり、その世の中になっていくために何をしていくのかという役割と言われている。

また、最近の企業の経営においては、パーパス経営と呼ばれる

このビジョン・ミッションよりもより高次なその企業が存在することが、社会にとってそどういった意義があるのかを指針として企業の経営をしていくトレンドがあり、この流れはますます広まっていくだろう。

世界的な企業が掲げるパーパスはこういった例があげられる。

Nestle:食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めること

Google:世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること

SONY:クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす

Amazon:地球上で最もお客様を大切にする企業であること

こういった流れが広まっていくと、企業のパーパス、ビジョン、ミッションといったものは、ある意味で、企業で働く人や、これから企業で働いたり、関係するであろう人にとって「踏み絵」のような役割を果たしていくことになり、よりその企業にとって、望ましい社会との関係がカタチ作られていくことになる。それに伴い、必然的に、企業で働く、あるいは関わることになる個人にもパーパスやビジョン、ミッションといったものが求められるようになっていく。

そういった流れを汲んで、1人ひとりが中心となり、発展していける組織を作ることが求められるようになり、注目されるようになったのがオーセンティック・リーダーシップだ。オーセンティック・リーダーシップとは、自分らしさを貫くことでメンバーに影響力を及ぼすスキルのことを指す。オーセンティックには、「本物の・真正の・確実な」といった意味があり、ここではオーセンティックは「自分自身の考えに根ざしたもの」の意味で使われている。このオーセンティックはかつて、2000年代から2010年代にかけて、MBAホルダーと言われた人々がエンロンの多くの事件を巻き起こしてしまった反省に立ち、主張されるようになった言葉でもあり、リーダーシップにオーセンティックをつけなくてはいけないほど、「暗黒面に堕ちてしまったリーダー」が多いということの裏返しでもあるのだ。
そんなオーセンティック・リーダーシップだが、提唱者の一人と言われる米国メドトロニック社元CEOのビル・ジョージ氏は、必要な特性として5つをあげている。

・目的(自らの目的を理解する)

・価値観(倫理観に基づいて行動する)

・真心(真心を込めてリードする)

・人間関係(継続的な関係を築く)

・自己規律(自己を律する)

では、このオーセンティック・リーダーシップを発揮するために必要なことは何か。それこそが、いま、企業にも個人にも、必要なことと言われるナラティブだ。ナラティブとは、語ることを意味するが、ストーリーテリングのように、出来上がった物語を語るのではなく、一人ひとりがより自由に主体となって語るイメージを持ち、個人の思いや原体験といった極めて「素朴な本音」をベースに語られる言葉だ。オーセンティックさは、個人のポジティブだったり、ネガティヴだったりする「素朴」なストーリーを基に、他者や社会の文脈(ナラティブ)を踏まえることで、発揮されていくのだ。

これからの社会では、このオーセンティックさを発揮できる人材が、優秀であり、引いては社会を牽引していく存在として、認められるようになるだろう。また、こうした流れは、学校教育における自ら、問いを立て探究していく、探究学習と結びつき、次世代の人材には、自らのナラティブを動機とする問いを探究していくことで、オーセンティック・リーダーシップを発揮していくことの標準搭載が求められるようになるだろう。

また、こういったオーセンティックさを発揮し、ビジョンを目指していくことは、神話学者のジョセーフ・キャンベルが「千の顔を持つ英雄」で数々の神話を分析することで明らかにした心を揺さぶる物語の基本構造「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」を追体験していくこととも関わっている。キャンベルが明らかにした「神話の法則」は以下の通り。

1.Calling(天命)

物語の始まり。主人公は、さまざまな出来事をきっかけとして、これから始まる旅のミッション(生きる意味や役割、使命)を見つける。

2.Commitment(旅の始まり)

 ここで主人公に対して新たな旅立ちへの誘いが訪れる。

3.Threshould(境界を超える)

 しかし、主人公は旅立ちに不安や恐怖を覚えるが、 その恐怖を乗り越え、旅立っていく

4.Guadians(メンター)

 冒険へと旅立つ時に、師匠との出会いが訪れる

5.Demons(悪魔)

 旅を続ける主人公は、「悪魔」という言葉に象徴される試練に遭遇する

6.Transformation(変容)

 Demon「悪魔や悪の権化、自分自身」を倒した主人公は英雄へと変容する

7.Complete the task(課題完了)

 ひとつの課題を成し遂げた主人公は、自身の旅での体験を振り返り、その旅の意味を整理し、学び・体験・悟りを統合する。

8.Return home(故郷へ帰る)

 主人公は、旅を終え、元の世界に戻っていく。

このプロセスを人生において、体験していくことは、英雄になる体験を追体験していくことである。現在、この法則はコーチングやキャリア開発などの分野で注目され、この法則を基にしたカリキュラムや自己変容を促すオンラインスクールも誕生している。

また、神話学者のジョセーフ・キャンベルは、「神話の力」で現代において、神話が人々の実際の生活から遠い存在となったことが、若い人々のカウンターカルチャーを生み出す源泉となっているとも語っており、今後は、英雄の旅がキャリア開発に組み込まれることによって、徐々に、現代人にとってのイニシエーション(儀礼)になっていくのかもしれない。

さきほどまで、英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)がキャリア開発に組み込まれるという話をしてきたが、この英雄の旅には、当然ながら多くの危険が伴う。特に、必要とされるのがセルフエフィカシーと呼ばれる自己肯定感と自身の内面と向き合う技術だ。

そして、これまで人類史においてこの技術の役割を担ってきたものが、宗教に他ならない。キリスト教の言葉に、メタノイアという言葉がある。この言葉は、「単なる内面的な性質の変化ではなく、人生の完全な転向、神の助けを要する一方で、人の側もまた倫理的に振舞うことを求められるほどの、大々的な方向転換」を意味する。英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)においてDemons(悪魔)に主人公が向き合うとき、まさにメタノイアが必要とされるのだ。しかしながら、多くの人々がそのような宗教におけるメタノイアを体験できるものではなかったため、自己変容を遂げることができる人はわずかだった。

そこに近年、登場したのが「トランステック」だ。「トランステック」というコンセプトは、米国西海岸の起業家・心理学研究者のジェフリー・マーティンが、2007年に提唱したと言われ、最近では、トランステックではなく、変化そのものを促すよりも心身ともに優れた状態という結果をもたらすウェルビーイング・テクノロジーが代わりに使用されている。非営利団体トランスフォーマティブ・テクノロジーの奥本直子はウェルビーイング・テクノロジーを「ニューロサイエンスや臨床心理学をはじめとした科学的知見、そしてデジタルテクノロジーとデータを掛け合わせ、精神・感情や社会的な対人関係のウェルネス、そして自己実現とパフォーマンス向上を支援する、人の可能性を最大限に引き出すためのテクノロジー」と語っている。

日本では馴染みの薄いウェルビーイング・テクノロジーだが、認知行動療法やセルフコンパッションといった科学的知見をベースに若者の自己変容を促すオンラインスクールもすでに登場しており、多くの人々がメタノイアを体験することで、より良い人生を生きる時代もそう遠いものではない。

これまで、素朴という名のナラティブをテーマに、企業と個人のビジョン、ミッション、パーパス、それを実現するために必要なオーセンティックリーダーシップ、英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)、そして、トランステックを見てきた。一見、別々に見えるこれらの事柄も実は、ナラティブという一本の線で繋がったものであり、これからの時代は、個人のナラティブ、素朴を曝け出すことが、その個人の幸福、引いては社会全体を良くしていくだろうことを読者に感じていただけたら幸いだ。この記事の後編はこちら

(参考記事)

1.BrandPurpose:https://medium.com/@afdhelaziz/brand-purpose-101-everything-you-wanted-to-know-but-were-afraid-to-ask-21593fb37d33

2.オーセンティックリーダーシップ:https://www.corner-inc.co.jp/media/c0107/

3.ヒーロー・ジャーニー:https://www.nlp.co.jp/000204.php

4.メタノイア:https://anchor.tfionline.com/ja/post/metanoia-change-life_ja/

5.トランステック:https://wired.jp/2021/01/16/wired-insights-for-2021-transtech/

6.企業のパーパス・ブランディングから考える、「個人」のパーパスの見つけ方https://www.workersresort.com/jp/style/personal-purpose/

7.オーセンティックリーダーシップとは?具体的な行動と振る舞い4つ
 https://lostash.jp/sales/skill-development/1076846#toc7

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