アートとデザインが交差するコミッションワークとは?

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コミッションワークという言葉を聞いたことはあるだろうか。
簡単に言うと、コミッションワークとは、アーティストがクライアントやコレクターから作品をつくってくれと依頼され、作品を制作することだ。それに対して、デザインワークという言葉もある。

こちらは、デザイナーがクライアントからデザインを依頼されてデザインを制作することだ。

筆者自身、デザイナーとしてクライアントワークをしており、このコミッションワークなるものに強い関心がある。

そこで、今回の記事では、アートとデザインが交差するコミッションワークに焦点を当て、その本質に迫っていきたいと思う。

コミッションワークとは?

先ほど、簡単に紹介したように、コミッションワークは、アーティストがクライアントやコレクターから作品をつくってくれと依頼され、作品を制作することだ。より詳細に言うなら、その場所や環境、さらに、ビルオーナーや、地方自治体などのクライアントの要望など様々な条件をもとにして、その場所にあった形で委託制作されたアートワークをコミッションワークと呼ぶ。コミッションワークには大きく2つの種類がある。1つは、アーティストがいつも制作している自身の作家性を生かしたままで、サイズや雰囲気などを希望されたものに変えて制作するパターン、もう一つは、クライアントの注文内容や希望を聞いて制作するパターンだ。それに、売れっ子のアーティストには、ウェイティングリストという待ちリストがあったりする。コミッションワークの仕事を手に入れるには、ギャラリーを通してあるいは個人で営業や宣伝を続ける中で手に入れることができる。ただし、コミッションワークでは注意すべきことがいくつかある。ここでは、そのいくつかを紹介したいと思う。

1.クライアントの予算が限られている

例えば10万円で何かつくってくれないか聞かれると言ったこともあるのであまり予算に自由がなかったりもする。

2.途中で突然、企画が打ち切りになる

こういった場合に備えて、製作費の前金をあらかじめ半分もらっておくということも対策として必要だったりする。

3.ギャラリーが仲介で入っている場合

こういった場合には、仲介のギャラリーの取り分が何%なのか話し合って確認していく必要がある。

4.自分が好きではないタイプの作品を作ってもらえないかと依頼される

 例えば、本人が数年前にやっていたことで今はもうあまり好きじゃないタイプのものをまたつくって欲しいと言われたりもする。

5.記録をしっかりと残しておく

 やりとりは実際に会ったり、電話、SNS、メールですると思うが、しっかりと記録しておくようにしよう。

6.自分のブランドのイメージを崩さないかどうか

 依頼されたコミッションワークに取り組む際にはどこからどのように宣伝するか、されるか、誰にお金をどう払ってもらうか、同業者にどういう風に見えるかなどのイメージ作りができるかどうかを考えた上で、仕事を引き受けるようにしよう。アーティストにとってイメージづくりは大切なことだ。

デザインワークとコミッションワーク

そんなコミッションワークだが、デザインワークを手がける筆者からすると、クライアントから依頼されるという共通点がありつつも、内容に自由度があると感じる。というのも、基本的にデザインワークは、目的に対して機能的であることが求められるため、あまり個人の恣意性といったものを出すことができるものではないからというのがある。例えば、WEBサイトのデザインを例にあげると、集客を目的としたランディングページなのか、それとも、会社やサービスの情報を伝えることを目的としたサイトなのか、といった目的に対して掲載するコンテンツや素材を選択し、制作していくなど、基本的に最適解を目指して、デザインは制作されていく。
 それに対して、コミッションワークは、先ほど言ったように、注意すべきことはあるものの、アーティストが表現したいことをクライアントの目的に合わせていくということをデザインワークよりも自由度を持ってやっていくことができる点が異なる点かもしれない。もしくは 自由度と述べた“自由” の定義が根本的に違うのかもしれない。

アートとデザイン

ここまで、コミッションワークとデザインワークを見てきたが、この2つをより抽象的なカテゴライズをすると、アートとデザインという領域に分けられる。この2つの領域は長らく、議論の対象となってきたが、その共通点や違いとは何なのかを筆者なりに考えていきたいと思う。デザインとアートの共通点はどちらにも鑑賞者「見られること」/ 利用者「使われること」といった表現の受け手がおり、制作の外にある産業や商業によって意味や評価が生まれるということだ。また、思考の方法もコンセプトワークから始まり、具体的な制作へと移行していくところが似ている点としてあげられる。
 一方でデザインとアートの違いとしてはデザインはクライアントがいる場合が多く、何らかの統合的な目的が先にあって設計し、様々な変数(機能・美しさ)があり、それを調整していくのに対して、アートはクライアントがおらず、基本的には自己の衝動が基本となっており、作品の制作も自己で完結でき、内容をマジョリティ他者にもわかるように”翻訳”するのではなく、“抽象化”しているのがその特徴とも言える。

 しかし、近年では、問題を提起するデザインであるスペキュラティブデザインや人間中心ではなく、脱人間中心をテーマとした問いをベースとした実験的なデザインのプロジェクトも数多く生まれており、アートとデザインの領域を横断するようになってきている。例えば、文化人類学を学んだデザイナーのトーマス・トゥエイツは、The Toaster Projectで、既製品のトースターをリバースエンジニアリングでバラバラに分解し、その部品を実際に自分で鉄などの材料探しから行い、トースターを作ることで、資本主義の在り方を問い直すデザインプロジェクトを行い、反響を呼んだ。
 また、アートも美術史を参照した上で、作品を作ることは美術であるのに対して、そうでない場合はカタカナのアートと言われるようにもなっている。

(画像引用元、https://www.thomasthwaites.com/the-toaster-project/)

ここまで、アートとデザインを通して、コミッションワークに関して考えてきた。これから、アートとデザインの領域の境界線がより、曖昧になっていくにつれて、コミッションワークの概念自体も変化していくだろう。今後も、様々なプロジェクトが立ち上がっていくアート・デザインから目が離せない。

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